- 温暖化対策の可能性を探る- 小峰書店2008年4月刊、(定価1,500円+税)
著者は、広島大学大学院生物圏科学研究科教授です。本書は、シリーズ「自然とともに」の一冊として、小中学生でも理解できるような、やさしい語り口で綴られていますが、内容は図販やデータも豊富で、しっかりとした科学的な解説書となっています。
竹林の暴走による脅威はご存知のとおりですが、著者はその解決策として、竹炭として利用するのが一番だといいます。竹材を新たに大量に活用する方法として期待するのです。
竹炭の最大の特徴は、たっぷりと水を貯え、じっくりと出すことです。100㎝3の竹炭で20~40㎝3の水を貯えますが、それは木炭の保水力の3倍以上のレベルです。竹炭の表面には、大量のK、リンといった窒素と並ぶ3大栄養素や、Mg、Ca、Cl、Sなどの植物にとって欠かせない栄養素が含まれています。竹炭はそれらを植物に吸収させながら、同時に雨水や大気中のホコリから補充復元してゆきます。また酸性雨をほどよく中和するのです。
竹炭の不思議な力はその構造にあります。微細な孔が無数にあって、その大きさは千差万別ですが、全体として木炭のサイズの1/10の細かさで、800℃で焼いた竹炭1gの表面積は、なんと800m2もあります。その広い表面積に多くの微生物が生活するので、病害菌を防ぎ、連作障害を起こり難くするのです。本書では、竹炭を敷きこんで栽培した、いろいろな植物の生育状況の比較写真を載せていますが、どの植物でも生長量と寿命に大きな効果があることがわかります。また竹炭層を厚くすると、夏の日照りで水やりしなくても元気に育ちます。これこそ都市の屋上緑化や水質浄化に、大きな効果が期待できるお宝なのです。
広島大学の屋上で行った屋上緑化の実験では、真夏の35℃近い日照りでも、ほとんど散水なしで、下の部屋の温度を4~5℃も下げました。竹炭が大量の水をため込むので、土も少なくてすみ、屋上の軽量化がはかれます。なお著者らは、その土や竹炭の下に敷き詰める資材として、廃プラスチックを再生した超軽量ボードを開発しました。耐久性があり、しかも何度でも再生して再利用ができます。(財)日本環境協会によるエコマーク第一号になりました。ビルの屋上は、真夏と真冬を毎年繰り返すたいへん厳しい環境のために、ひび割れ防水補修に多大の補修費用がかかりますが、この屋上緑化新技術でその必要がほとんどなくなり、大幅な経費節減になるのです。現在は6つの企業がこの事業を推進しています。
2002年にはタイのゴールデンバンブー協会から要請があり、軍司令部の屋上で実験して驚くべき効果をあげました。これを見たラオス、ミャンマーも共同で導入したそうです。
竹炭はゴルフ場でも大きな効果を上げています。千葉県市原市のあるコースでは、竹炭を敷いたグリーンを一つ造成したところ、散水の量が1/3に減り、肥料や農薬が半分ですんだそうです。コースの土、地下水、調整池の水の汚染も軽減できることでしょう。
竹炭の作り方も、各種の窯や移動式自動炭化窯を具体的に紹介しています。量産には平たい窯が良いとのことでした。今後見込まれる大きな需要に応えることを期待しています。了