「超常現象」を本気で科学する 石川幹人著 2018年4月26日 吉澤有介

新潮新書2014年5月刊

著者は東工大理学部卒、松下電産(現パナソニック)で人工知能を研究後、明治大学教授になりました。認知情報論、科学基礎論を専攻しています。表題にある幽霊、テレパシー、透視、念力などの「超常現象」は、多くの人が関心を示しながらも「非科学的」として否定されてきました。これまで人類が築き上げてきた科学の体系に反するからです。
しかし、科学の歴史は、それまで説明のつかなかった諸現象を解明してきた歴史でもありました。著者は、その「超常現象」という未知の領域に本気で取り組み、研究会を主宰してそこで得られたさまざまな科学的成果をもとに、新たな世界観の構築を目指しています。

本書は、「」、「」、「」の3部で構成されています。まず「」の部では、多くの幽霊現象が、実は今の科学で説明のできる通常の現象であるという、幽霊論が研究会では優勢でした。幽霊を見るのは、人間の恐怖の反応が極めて素早いことから来ているようなのです。進化の途上で、過剰な恐怖感を持つことが生存に有利だったからでしょう。夢に見る金縛り・体脱体験や臨死体験も、交換神経と副交感神経のバランスの崩れと説明されました。

しかし、幽霊そのものは肯定されないものの、幽霊のしわざとされた超常現象の存在の一部が確認されています。現代物理学では説明のつかない「超能力」についての心霊研究会が、19世紀に盛んになりました。そこに便乗するトリックや詐欺行為が発覚して一時は低迷しましたが、1930年代に米国の心理学者ラインが、実験による「超心理学」を提唱して、テレパシー・透視や念力を研究する新しい学問が生まれました。それは超感覚的知覚「ESP」と呼ばれ、さまざまな実験が行われました。星形や波形などの5種類のカードを当てたり、夢でテレパシーを受けて効果があり、さらに緻密な「ガンツフェルト実験」手法が開発されました。ある刺激を与えて被験者の視覚と聴覚を減退させて、夢見に近い意識状態にすると、離れた部屋の画像を読む、偶然でない何かが働いた効果があることが確認されたのです。

著者は高校生のころマジックに凝り、トリックには自信がありましたが、たまたま超能力者のユリ・ゲラーが来日し、著者も不思議な現象を体験しました。有名なポルターガイストは、無人の屋敷で物体の移動や浮遊現象が起こります。そこには関係する人物が、無意識に念力を働かせているらしいのですが、再現や実験ができません。事実の有無に固執するよりも、分受け止めて、その現象が何を訴えているかを心理分析するほうが生産的でしょう。

ESPには、「予知」も含まれます。封筒に入っているシンボルを当てる「透視」実験で、これから入れようとするシンボルの予知も、同じ成功率でした。「時空間を少し超えた透視」ができたのです。心理学者のユングは、シンクロニシテイを提唱しました。物理的に因果関係がないのに起きた偶然の一致に、意味があるかもしれないと考えたのです。そのように超常現象を積極的に捉えると、超能力の発揮には無意識の仕組みがありました。無意識には新しいアイデアを生む、創造的な過程があります。セレンデイピテイも幽霊体験に通じていました。超心理学では微かな能力でも、大きな成果「」を生むことができるのです。「了」

 

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