池上彰が聞いてわかった「生命のしくみ」池上彰、岩崎博史、田口英樹共著 2017年6月5日 吉澤有介

- 東工大で生命科学を学ぶ - 朝日新聞出版2016年9月刊

「生きているって、どういうことですか」という問いから始まる本書は、生物学をほとんど学んでこなかった東工大の新入生に、2016年度から生命科学を必修としたことから、その入門書として企画されたものです。聞き手は池上さん、それに生命科学の教授である岩崎さんと田口さんが、わかりやすく解説してゆく形になっています。その特別対談には、栄誉教授であるノーベル賞の大隅良典さんも登場するという豪華版となりました。
大隅さんは、すべての学生が生命科学を学ぶ理由として、まず「人間は地球上の生物の一つである」という認識を持って欲しいこと、もう一つは実体験として「自然をとらえ直す」ことを挙げています。

そして本書は、これまでの高校教科書のような暗記科目としてではなく、また単なるエピソードでアピールするのでもなく、基礎から発展へと体系的に積み上げて根本原理を学び、生命のしくみを追及することを狙いとしています。
池上さんの素朴にな質問に答える本書の内容の深さは、とても要約できるものではありませんでした。ここでは目次からその一部をご紹介してみましょう。こんな具合です。

1. 生きているって、どういうことですか?
生命科学とはどんな学問ですか?
細胞の定義は?最初の生物はどんなものでしたか?
多細胞が生まれたのはなぜ。オスとメスがなぜいるのですか?
植物と動物の違いは?
DNA、遺伝子、ゲノム、染色体の違いは?
DNAはなぜ二重らせんなの?・・メリットは?
細胞が分裂するときの様子は?
クローン細胞、ES細胞、iPS細胞とは何ですか?
2、 細胞の中では何が起きているのですか?
代謝とは何ですか?
タンパク質は何をしているのですか?
タンパク質の種類・形は?
酵素、コエンザエム、ビタミンとは?
遺伝子組み換え食品は有害とは思い込みか?
DNAとタンパク質をつなぐ「生命の統一原理」とは?
そこで起きていることは?
タンパク質は、どこで、どのようにつくられているのですか?
DNAとRNAと両方あるのはなぜ?
DNAの95%はムダ?
細胞のリサイクルシステムとは?
3、 「死ぬ」ってどういうことですか?
細胞はいつも増え続けているのですか?
タンパク質のリニューアルシステムとは?
ガン細胞ができるのはなぜ?
細胞の「死}とは?
老化するとはどういうこと?
4、 地球が多様な生命であふれているのはなぜですか?
地球上に多くの種類の生物がいるのはなぜ?
どのようにして多様性が生まれるの?
進化とは?
地球外にも未知の生命がいるの?
細胞がわかると生命がわかる?などなど。

生命科学は、いまや現代で生きるための必須の常識となっています。しかしわかっていないことも多い魅力的な分野です。機械や建築などでも生物に学ぶものが沢山あります。生命は、偶然に偶然を重ねた結果として生まれました。生命システムにはムダが有効に働いています、そこには企業や経済など人間社会にも通じる大きなヒントがありました。「了」

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