著者の田近氏は現在東京大学準教授で地球が誕生してから現在までどおのような
変動を経てきたかを解説しています。
この本は、8章で構成され生命の誕生や大気の発生など興味ある内容が展開され
ています。
1.生命の存在する惑星
2.大気と海洋の起源
3.地球環境の安定化の要因はなにか
4.生命の誕生と酸素の増加
5.気候の劇的変動史
6.スノーボールアース・イベント
7.恐竜絶滅を引き起こした小惑星衝突
8.そして現在の地球環境へ
第1章では、太陽系の惑星を、地球型、木星型、天王星型の3種に分けて、
生命が存在できるのは、地球型惑星であり、その中でも大気と海洋の存在す
る地球のみが安定して生物の存在できる唯一の惑星であると述べています。
第2章では、大気と海洋がどのように出来たかを説明しています。地球誕
生直後の6億年の状況がはっきりしないので、明確にはなっていないが、大
気の組成は、大幅に変化したが、海の組成はここ数億年間殆ど変わらないと
思われています。
第3章では、顕生代の約5.4億年 ― 広く見れば原生代以降の24億
年の地球安定化について述べています。46億年前には太陽の明るさは現在
の約70%であったと推定されます。
それにも関わらず地球が凍結しなかったのは温室効果ガスの存在です。
温室効果ガスは、二酸化炭素の他に、メタン、アンモニア、水蒸気等様々あ
ります。
これらの働きにより地球は生命が存在できる環境を保持してきているのです。
この安定化のシステムがウオーカー・フィードバックと呼ばれる負のフィー
ドバックです。
第4章では、生命の誕生から始まっています。38億年前が最古の生命活
動の痕跡と言われているそうです。しかし地球上に大量の酸素をもたらした
シアノバクテリアの発生につては、35億年前という従来の記録は必ずしも
確定はされてないと述べています。
しかし、私見としては初期の嫌気環境の参加の時間を考えると相当早くに、
シアノバクテリアが発生したと考えています。
22億年前頃に急激な大気中の酸素濃度の増加が始まっています。
我々の知る地球はこの辺からという気もします。
第5章に、気候の変動史を記しています。二酸化炭素の濃度は顕生代を
通じても減少してきています。(カンブリア紀で今の20倍程度)酸素濃
度も、石炭紀には今の2倍の濃度と推定されています。
この時代、大陸の動きが活発でありそれに基づく様々な問題の出現もあっ
たようです。
例えばヒマラヤ山脈の出現による寒冷化等はこの象徴的な出来事でしょう。
第6章では、スノーボールアースについて述べています。スノーボール
アースは、約6億5千年前(2度の全球凍結)と約22億年前に出現して
います。
原生代の岩石の解釈からは全球凍結が考えられながら、それはないとされ
たのは、凍結からの離脱のシステムが明らかになっていなかったからです。
1992年この問題を解決してジョセフ・カーシュビングが全球凍結を唱
えました。全球凍結しても地球の火山活動は継続します。
この間の火山からでた二酸化炭素は、地上の海、岩石等と切り離されるた
めに反応せずに、大気中に蓄積され、大気は高温となり氷は溶けだします。
この間は400万年程かかると推計されています。
氷の融解は数百年から数千年で終わりますが、ここで、凍結時の―40℃
から60℃へと約100度の大きな温度変動があります。
ここでの、22億年前の凍結の後に、原核生物から真核生物が出来、6.5億
年前の凍結の後に多細胞生物が出来たとも考えられます。
今後大いに考えてみるべき状況と思われます。
第7章には、小惑星衝突による恐竜絶滅が述べられています。小惑星の
衝突に関する調査は現在まだ進行中で、これからも新しい発見がでてくる
ことが期待されます。
広島の原爆程度の衝突エネルギーの天体衝突は、年に数回程度の確率であ
るが、この場合は地上に達せずに燃え切ってしまう。中生代末の衝突程度
の衝突は、数十億年に1回程度の確率であり、顕生代にはこの他には衝突
はなかったと、言われています。
今後の衝突について、これからは考えておくべき大きな問題と思われます。
第8章には現在の地球環境問題が記されています。地球の歴史から見る
と、現在は間氷紀である。ミランコビッチ仮説によると、氷期と間氷期は
約10万年の周期で繰り返されている。
ここまでは、人間活動には関係のない地球の問題でしたが、これからの地
球温暖化問題は、その関係を如何に取るかを考えなくてはならない。
二酸化炭素の急激な上昇はどのような問題となるか、我々も考えてみるべ
き問題でしょう。
記 藤田良廣