クマムシ博士の「最強生物」学講座 堀川大樹著2016年1月23日 吉澤有介

  -  私が愛した生きものたち-
「クマムシ」は、体長0,1~1,0ミリ程度で、4対の肢を持つ小さな生き物です。ムシといいながら昆虫ではない。
歩く様子がクマに似て、独自の緩歩動物門というカテゴリーを構成し、北極や南極の極地や熱帯雨林、海、山など地球上のあらゆるところに生息しています。私たちの身近なところでは、道路の上のコケなどにもいる。食性も植物の藻やコケを食べるもの、微小動物を食べるもの、雑食性もいたりして、その生態は実にさまざまですが、本質的には水生動物といえるでしょう。
ところが陸に棲むクマムシは、水がなくても生き延びることができます。周囲から水がなくなると、カラカラに乾燥してしまいますが、それで死ぬことはありません。彼らは「乾眠」という仮死状態に入るのです。そのまま水の来る時を待ち続け、雨などで吸水すると再び生き返ります。その仕組みはいまだに解明されていません。
その上、乾眠状態のクマムシには、とんでもない耐久性があることが知られています。マイナス273度の低温、プラス100度の高温、ヒトの致死量のおよそ1000倍の放射線、有機溶剤、紫外線、75万気圧、真空など、あらゆる極限的ストレスにも耐えられるのです。宇宙空間で10日間曝されても、地球に帰還してから復活したという報告もあって、いまやクマムシは宇宙生物学の重要な研究対象となりました。
著者は、この「最強の生物」クマムシの魅力にはまって北海道大学大学院で学位をとり、10年以上にわたってこの常識をはるかに超えた生き物の研究を続けています。その成果はNASAに認められて、シリコンバレーのエームズ宇宙生物学研究所に移り、さらにフランスのパリにある国立医学研究機構に招かれました。クマムシの乾燥耐性の謎を解明できたら、医療用臓器や生鮮食品の保存だけでなく、人間カップラーメンすらできるかも知れません。著者の夢は果てしなく広がってゆきます。
しかしクマムシの研究は、あまりにも常識破りの分野であるだけに、確かな研究環境がなかなか得られません。世界の研究者もごく少なく、日本ではそれこそ稀な存在なのです。そこで著者は自分の夢をかなえるために異色の行動に出ました。自ら資金を集めて研究活動を進める試みです。具体的に、この可愛くて魅力的なクマムシをキャラクターにして、多くの人たちに親しんでもらい、積極的に支援して頂くという構想を立案しました。
それが無料ブログの「むしブロ」と、有料メルマガの「むしマガ」で、本書は、その一部を加筆修正して再構成したものです。この型破りな試みは当たりました。購読料月額840円の「むしマガ」の読者は増え続け、クマムシさんグッズにも多くのファンが出来て、日本科学未来館など各地で販売されています。クマムシ博士の語る極限生物たちのエピソードは、本書でも数多く紹介されていますが、生命科学の先端を行く実に楽しい世界でした。
ここに「むしブロ」の一つを載せておきましょう。http://horikawad.hatenadiary.com/  でご覧ください。動画が見ものです。著者は有料メルマガ「むしマガ」の購読を強く望んでいます。皆さんも、クマムシ研究のサポーターに参加されてはいかがでしょうか。「了」

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