バイオエタノール(BE)の基本……木材からBEを作るのは何故難しいか
1.木材の組織
木は樹皮に近い部分は生きていて外に向かって成長している。
内部は死んで色々な物質が沈殿している。
木材の組織を導管(水を送る)中心に展開すると左図のようになっ
ている。細胞同士はリグニンが多く含まれる糊によって強固に接着
されている。
ルとリグニンによって強固に組み立てられている。
2.木の成分構成
セルロースはグルコースが鎖状につながった高分子で木材の40~50
%を占める。平板状に積層されているので安定して水に溶けない。
デンプンも同じ成分だが構造がラセン状であるため溶ける。ヘミセ
ルロースは樹種により成分が変化する。
リグニンはベンゼン環を持つフェノール類で構成している。
糖類ではないのでこれからエタノールは出来ない。
%表示 セルロース セミセルロース リグニン
広葉樹系 40-55 24-40 18-25
針葉樹系 45-50 25-35 25-35
草本系 30-45 35-50 10-20
トウモロコシ、稲わらなど
3.木からエタノールを作るとしたら?
セルロースやセミセルロースを糖化するには2つの方法がある。
「酸糖化法」と「酵素糖化法」である。
硫酸糖化法
1960年代に実行されたがコストと設備費が合わず見送られてきたが
ここに来て見直しが行われている。
酸の加水分解反応は数十分程度で終わるが生成した糖が過分解物に
なって収量が落ちることや酵母の発酵を阻害してしまう。
それらに対する対策が開発要素である。
酵素糖化法
約50℃の温和な条件で行われ過分解物の発生もない。しかし糖化に
24時間以上の長時間を必要とし安定なセルロースを酵素に反応しや
すいように前処理が必要になる。
水や薬品を加え高温高圧で煮る蒸煮法や加圧蒸気下から一気に大気
圧に開放して繊維を解す爆砕法、機械で微細に粉砕する方法などが
ある。低コストで処理できる方法の技術開発が主要なテーマである。
糖化酵素の開発
セルロースを分解する酵素としてはセルラーゼ酵素群がある。
カタツムリやシロアリ、昆虫などの胃や腸に定着している微生物に
よるものである。最強の酵素力化を持つのは糸状菌のトリコデルマ
リーゼイが有名である。コストも2000年当時から1/30にも低下して
おり酵素を使う障壁は小さくなってきている。
記 福島 巖