「地震と火山の日本を生きのびる知恵」 鎌田浩毅著 2014年12月13日 吉澤有介

  著者は火山学が専門の京大教授で、地球科学をわかりやすく解説して「面白くて役に立つ教授」として人気があります。本書では地球科学の観点から、日本列島が地震の活動期に入ったと警告しています。まさに「動く大地の時代」が始まったというのです。火山噴火のリスクが高まりました。東日本の巨大地震に誘発される大地震はもちろん、著者は300年に一度という巨大な「三連動地震」が、2040年までに必ず起きると明言しています。

 1000年に一度という大変化が起こってしまったのです。今回の地震で日本列島は、東に5.3mも移動しました。活断層の多い日本で、これから地震の起こらない場所はありません。日本全域では、高感度の観測網がありますが、地球時間からみると瞬きのような、数年という単位での現実的な解析は、もともとムリな話です。それに人々は、地震の来るところに好んで住んできました。そこは豊かな土壌と水の湧き出す場所ですから、都会が出来たのです。地震には「恵み」という面もあります。時間軸を長くとって考えると、私たちの先祖は、数十年から数万年に一度の自然災害に遭遇しながら生き延びてきました。日本人のDNAには、天災から生き延びる要素が入っているのです。

 しかし火山噴火のほうがたいへんです。古来、地震で滅びた国はありませんが、火山の噴火は文明を滅ぼしました。プラトンが記したアトランテイス伝説は事実だったことが確かめられています。エーゲ海のサントリーニ島と、クレタ島にその痕跡が発見されました。

 こうした巨大噴火は日本にもありました。今から7300年前の薩摩硫黄島での巨大噴火は、南九州を全滅させ、その火山灰は遠く東日本にまで堆積しました。日本列島ではこうした巨大火山噴火が7000年ごとに発生しています。もういつ起きても不思議ではありません。そのときは日本列島には住めなくなります。これはプレートが動くためで、その速さは地球科学的にはかなり速いのです。さらに「超巨大噴火」が起こります。規模は巨大噴火の一万倍もあるので、地球環境はメチャメチャになり、生物は大量に絶滅します。古生代、中生代、新生代の時代区分のもとになりました。その周期は一億年くらいで、これも満期に近い。ただ誤差が一千万年ほどあります。一般に火山の寿命は百万年くらいですが、地球時間では、あっという間の出来事なのです。「年」を「円」にしてみると、その感覚がわかるでしょう。地球の誕生は、46億円で、宇宙の歴史は137億円です。火山の寿命は100万円しかありません。著者はこれを「長尺の目」と呼んでいます。

 科学には限界があります。人間の頭の中でつくったものですから当然のことです。確率を高めることはできますが、そうかといって万が一の不安にかられて9999もある未来の可能性を捨てることはありません。地球や自然とどのように付き合ってゆくかでしょう。
 大自然は偉大です。絶えず畏敬の念を持って向き合わなければなりません。これを想定外などとはとんでもない。一万年ぶりの巨大噴火、10万年ぶりの隕石衝突もありうるのです。私たちは身体の声を聞いて野生の感性を磨き、しなやかに生きてゆくことです。「短い災害と長い恵み」と考え、身の丈に合わせたライフスタイルを取り戻すのです。「了」

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