ロンドン便り その48
1863年、世界で最初に開通したロンドン地下鉄は、その後次々と路線が新設され現在では路線数14、総延長400km、一日の利用者は370万人で朝夕の混雑は常態化しその輸送力は限界に達しています。この混雑緩和策の切り札として、1989年に東西、南北に貫通する クロスレールプロジェクトが計画されました。しかし、膨大な資金確保の目処がつかず計画は棚上げされました。その後、紆余曲折を経て2008年に政府の承認を得て、東西を貫通する予算規模148億ポンド(2兆5000億円)ヨーロッパ最大のインフラ工事と言われている クロスレールライン1プロジェクトが2018年12月の開業を目指してスタートしました。
現在、難工事と言われていた21kmに及ぶ、ロンドン市内を東西に貫通するトンネル部分は総重量1000トン長さ200mの8基のモンスタートンネル掘削機で80%まで進捗しています。
クロスレールライン1プロジェクトの概要
・路線名:クロスレール線1
・事業主体:ロンドン交通局
・総予算:148億ポンド(約2兆5000億円)
・開業予定:2018年12月
・路線:西方面の在来線のレデイングから東方面の在来線のシェンフィールドまでを結ぶ総延長118km(既存のヒースロ空港線と新設カナリー支線を含)ロンドン市内を貫通する21km区間は既存のロンドン地下鉄の下側を通過するため、最大深度50mの大深度トンネルとなり、既存地下鉄との最接近距離が80cmの箇所もある。
・駅数:40(内、ロンドン市内の10駅は新設駅で、すべて既存地下鉄駅と連結される)
・身障者対策:40駅すべて車椅子利用が可能なバリアフリー(ノンステップ)となっている
・車両:現在開発中のカナダボンバルデイア社の英国ダービー工場製、新型通勤車両を使用昨年の入札に応札したのはカナダ・ボンバルデイア社、スペインCAF社、日立、ドイツシーメンスであった。今年2月にボンバルデイア社が13億ポンド(2218億円)で585両分を受注した。日立も優先権を獲得し期待されたが、受注を逸しました。ドイツシーメンス社は途中降板した。
・最高速度:160km/h
・運行本数:24本/h
・見込輸送旅客数:年間2億人を見込む
路線図(青い路線が2018年開通予定の東西クロスレール、緑の南北クロスレールは未定)
クロスレールの開通によって、沿線に57,000戸の新築住宅需要とロンドン市内の新設駅に直結する5百万㎡の業務商業施設、住宅需要が生み出されると予想されています。また、45分以内の通勤圏の拡大によって、現交通体系の輸送力が10%増強され、混雑緩和が期待されてます。さらに、西方面や東方面からロンドン中心部までの移動時間が現在の半分から場所によっては1/3に短縮されるので、通勤やビジネス客だけでなく、旅行者からの評判も高まりそうです。
トンネル掘削現場を視察するキャメロン首相とジョンソンロンドン市長
私の滞在先がクロスレール沿線のイーリングブロードウエイなので、現在はロンドン中心部のボンドストリートまで地下鉄で30分かかるが、開通後は10分前後で行ける様になるとは驚きです。ロンドンの地下50mの大深度トンネルを時速160km/hの高速列車が駆け抜けるのは世界にも例がなく、乗車体験が出来るのを楽しみにしています。(了)