「いま地球には不気味な変化が起きている」C・セントラル著2014年5月1日 吉澤有介

  著者はIPCCで活躍している世界各地の科学者やジャーナリストら、気象情報や環境問題を専門とするエキスパートによる非営利、無党派の科学団体です。本書は2010年にT・フリードマンがNYタイムズで、気候変動に関するおびただしい報告が、むしろ人々の不安を募っていることを挙げ、研究者たちは相互に検証して、もっと短く小学6年生にもわかる用語で、今わかっていることを明らかにして欲しいと訴えたことから生まれました。

確かに気候変動の原因や、それがもたらす影響は解明されてきてはいますが、気候変動は本当に起こりつつあるのでしょうか。報告書をまとめる科学者たちも、自分たちが導き出した結果につねに疑問を抱いているのです。本書では、現時点における気候変動の知識を集大成し、その根底にある科学的な根拠をわかりやすく説明する。徹底的に追究するわけではないが、基本は押さえ、可能な限り偏見を避けています。地球温暖化という表現を避け、気候変動として、公正中立をめざしました。その主な項目を挙げてみましょう。

第1部 科学的な根拠として—「正常な気象状態」といっても、恐竜やマンモスの時代と現代とでは基準が異なる。過去にも気候の大変動はあった。私たちの祖先は、苦労しながら気候変動に耐えて生き延びてきた。二酸化炭素は地球を覆うスエットスーツ。天気と気候は違う。問題は二酸化炭素だけではない。もし私たちが化石燃料を燃やすことをやめても、温室効果ガスは放出される。二酸化炭素は、大気中に何千年も留まる可能性がある。海の酸性化はさらに進む。気温はどこまで上がるか、科学者でも予測できない。

第2部 実際に起こっていること---大気中の二酸化炭素の濃度は、この50万年の最高値に達している。海水面はこの100年で20cm上がった。気温は0.7度上がっている。150年前から氷河や氷冠が縮小しはじめた。北極海の氷は30年前から減り続けている。旱魃、豪雨など極端な気象がこれまでより頻繁に起こっている。生態系にも変化が現れた。

第3部 これから起こりそうなこと—コンピューターモデルは完璧ではないが、海水面は2100年までに180cm上がりそう。その間に温室効果ガスの影響を止める魔法はない。ハリケーンの数は減るが、より強大になる。旱魃ももっと頻繁に起きる。真水が不足する。気候変動はヒトの健康にも、生物にも良くない。食糧の供給が不安定になりそうだ。

第4部 気候変動のリスクは避けられるか—気温が2度くらい上がっても差し支えないと言ったのは誰か、科学者ではない。2度以下でも壊滅的な状況になりかねないのだ。再生可能エネルギーだけでは解決できない。炭素の排出量を減らそうと思えば、短期的にエネルギーコストは上がる。原発には問題がある。私たちが二酸化炭素の排出を抑えられなくても、将来の技術が救ってくれるかも知れない。地球工学だがリスクを伴う可能性もある。リスクがわかってからの後戻りはできない。また現状のまま凍結することも難しい。
1988年に立ち上げたIPCCの主な仕事は環境の「評価報告」で、これまでに4回出していますが、その分量は膨大で、一部に誤りもありました。ただいつもわからないことを明記しています。本書では、一般人の感覚でさらにやさしく解説していました。「了」

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