—石油ピークをいかに乗り切るか— 雑誌サインズ2013年1月号特別記事より転載要約
IEAは2010年の年次報告で、「石油の生産量が2006年にピークを過ぎた可能性が高い」と初めて明らかにしました。地球物理学者の石井教授によると、地球上の石油の総量は、ほぼ2億バーレルあったそうです。それを人類は現時点でほぼ半分使い切ったのです。
油田の発見と消費量のギャップ ピークは1964年 発見油田は減少一方
海外ではよく知られている石油ピーク論ですが、日本ではあまり主張する人がいません。なぜなら欧米では昔から石油の生産をしていたので、現在でも世界のすべての油田の基礎情報を持っていますが、日本では石油の輸入国なので、生産にかかわる基礎的な情報が少なく、あとどのくらい石油があるかといったことには関心が向かないのでしょう。モノづくり大国の日本人は、技術に過剰な自信を持ち、何とかなると耳を塞いでいるのです。多くのエコノミストも、「地球は有限である」という言葉が嫌いです。彼らは、経済は無限に成長できると信じ、国民もまた楽観的な話を好んで成長の夢に捉われています。しかし国策であった原発はあのようなことになりました。
原理的に原発の未来はありません。
最近ではメタンハイドレートが注目されていますが、その採掘には莫大なエネルギーコストがかかります。資源を量だけで考え、技術で問題を解決しようとしても、その「質」が低劣では現実的でない。資源が出力するエネルギーとそれを取り出すために必要なエネルギーの比 ERPでみることです。石油や天然ガスが100だったのに、自然エネルギーも5に届かない。今の文明を維持しようとしたら、最低10は必要なのです。
エネルギー資源の品質をEPRで評価する・・石油は夢の資源だった
技術至上主義に惑わされてはいけません。
いま一番の課題は、現在の農業が石油漬けだということです。肥料、農薬、機械に大量の石油を使います。
食料1キロカロリーを生産するのに、石油を10キロカロリー使っているのです。
つまり「人間は石油を食べている」と言っても過言でありません。現在の日本は、食糧の60%を輸入しています。その輸送にも石油を使い、フードマイレージは世界のトップです。
石油の供給が止まれば、日本の食料は直ちに危機に陥るのです。
かってのキューバは、日本と同じ石油漬け農業国でしたが、ソ連圏の崩壊によって人為的な石油涸渇になりました。そこで農業の基本政策を、脱石油型の伝統的な有機農業に回帰して危機を乗り越えたのです。2百万都市ハバナでの成功は、かっての百万都市の江戸を連想します。日本も国を挙げて、早急に未来への戦略を構想しなければなりません。
現代の文明は、安く豊かな石油に依存している事実をまず直視することです。その文明もいつかは終わることを理解した上で、自然と共に生きる。これが今後の暮らし方の基本でしょう。1970年ころの日本のエネルギー消費は今の半分でした。この時代のように生活するのです。自然は生態系、宇宙も含めて人間の理解をはるかに超える、壮大さと緻密さを持っています。
この自然と共存するには、人間の限界を知らなければなりません。地域ごとに自然エネルギーをうまく活用し、食料を浪費しない、ムダをしない、もったいないと思う社会をめざすことです。
最大のポイントは、「地球は有限」であり、「資源は質がすべて」ということです。その二つがわかれば、すべてが見えてくることでしょう。「了」