英国世界初の住宅向けRHIの導入 2013年9月15日 荒川 英敏                     

ロンドン便り その29

  英国DECCが世界初の住宅向けRHIRenewable Heat Incentive)の導入を発表

英国も、太陽光発電に代表される、住宅向けの再生可能エネルギーでの発電に対しての,
FIT(Feed In Tariffs) が実施されています。
一方、2011年より産業界や商業施設、病院、学校等の施設での、再生可能エネルギーで生成された「熱」のRHI (Renewable Heat Incentive – 再生可能熱インセンテイブ)は20年間の期限付きで導入され、着々と実績を上げて来ています。

しかし、これまで住宅の、再生可能エネルギーで生成された「熱」による、暖房・給湯に対しての、インセンテイブはありませんでした。

この度、英国DECCRHI)を2014 年春より導入すると、発表しました。

今回、発表された、RHIは以下の表の如くで、支払い期間は7年間となっています。

                            (単位:ペンス/kWh)

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ASHP-Air Source Heat Pumps: 空気熱回収ヒートポンプ  約11/kWh
Biomass: 木質バイオマスボイラー(ペレット、木材) 18/kWh
GSHP-Ground Source Heat Pumps: 地熱回収ヒートポンプ 28/kWh
Solar Thermal: 太陽熱温水器 29/kWh

この他に、Heat Meter(熱量計)の取り付け、データの読み取り、メンテナンス等の費用として、一戸当り£200/年(約30,000/年)の補助金が、向こう7年間支給されます。

Heat Meterは上記、4種類の再生可能エネルギーを使用した機器から生成される「熱」を読み取りるものです。これは、水道水の取入側の温度と、給湯側の温水を温度センサーで、流量は流量センサーで検出し、内蔵マイコンで演算され、熱量がデジタル表示される仕組みになっています。既に、英国製、ドイツ製、オーストリア製、イタリア製等のHeat Meterが市販ざれています。

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例1) 英国DMS社製 Sontex ブランドのHeat Meter

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2)バイオマスボイラー(ペレット燃料)使用時のメーター取付け例

住宅の給湯・暖房の熱源に化石燃料(ガス・石油等)の使用が多く、英国の全エネルギー消費の28%を占めています。従って、住宅の給湯・暖房の熱源を、再生可能エネルギーに転換させることは、英国が目標にしている、2050年の住宅のゼロカーボン化への、重要なステップであります。当面は2030年までに、全2300万世帯の1/3に相当する、800万世帯の給湯・暖房の再生可能エネルギーへの転換が、一つの目標となっています。

住宅向けRHIは、既に導入済みのFITや産業向けのRHIと共に、英国の全エネルギー消費によるCO2排出量を、2050年までに1990年比で、80%削減する目標達成に、大きく貢献をすることになるのです。
日本も、住宅の全エネルギー消費の1/3は給湯に係わるエネルギーであり、この熱源の  再生可能エネルギーへの転換は、重要なテーマであります。特に、普及のめざましいASHP(日本ではエコキュート)、森林資源を利用したバイオマスボイラー、まだ設置費用に難があるGSHP(地熱回収型ヒートポンプ)、比較的設備費が低く、昔からあり、国民にも理解し易い太陽熱温水器を対象に、住宅向けRHIを導入し、これら機器の普及促進をはかるべきだと思います。(了)

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