「孫子を読む」浅野裕一著 2013年2月10日 吉澤有介

  1.孫子の成立   春秋末(BC500年頃)呉の将軍、孫武が著した兵法書13編である。近年、原本の竹簡が発見されて、実在が確認された。

         後世にもう一人の孫子がいるが別人、但し一部補足した形跡がある。

2.日本への伝来  8世紀に吉備真備が持ち帰って、大宰府で講義した。大江匡房も講ずる。

                  江戸時代に注釈書が多数出た。家康は熱心に学んだが武士は嫌った。

         ナポレオンが愛読したという。日本は日露戦争以降は敵殲滅を追求。

         戦術を優先し、孫子の戦略は忘れられて、第2次大戦に敗けた。

3.孫子の再評価  基本原則を語る。一般人の集団で勝てる不滅の普遍性がある。

         現代の経営学に通じるところが多い。必読の古典である。

4.内容(抄録)

第1.    計    兵は国の大事。国の命運を決する5項目(道、天、地、将、法)がある。

        道は内政、天は自然、地は遠いか近いか、法は軍法、指揮権を指す。

        兵(戦い)は詭道なり、情報で戦うべし。算多きは勝ち、算少なきは負ける。

第2.   作戦   兵は拙速を聞くも、未だ巧久を見ず。兵は勝つことを喜び、久しきを嫌う。

第3.   謀攻   戦わずして勝つこそ最善。敵の企てを未然に断つ。敵の同盟を崩す。

        攻城は下の下。彼を知り、己を知らば百戦して危うからず。

第4.   形   まず負けない形をつくる。余裕をもって勝機を捉える。当然の如く楽に勝つ。

第5.   勢   衆を治めること寡を治める如く、正で合い奇で勝つ。無限の組み合わせあり。

        闘乱するも乱れるべからず。指揮統制の妙、敵を意のままに動かす。

第6.   虚実 善く戦うものは、人に致すも人に致されず。兵の勝ちは実を避けて虚を撃つ。

       軍の態勢を現す極地は無形、兵の形は水に像る。

第7.   軍争 敵より遅く出て、敵より先に戦場に着く。風林火山はここから出た。

       高稜に向かうなかれ。してはならない戦いはしない。

第8.  九度 将は九種の応変の対応法に精通せよ。戦いに空頼みは禁物。万全に備えよ。

       智者の思考は、常に必ず利と害の両面をつき混ぜて考察する。将に5危あり。

第9.  行軍 さまざまな地形に対処する法。川を挟んでの攻防。高きを好み低きを憎む。

       各種の兆候から敵情を判断する。敵の口上から真意を見抜く。真に強いのか。

第10.  地形 6種の地形に対応する術。敗北は天の災いに非ずして将の過ちなり。

第11.  九地 地形とは兵の助けなり。自領で戦闘してはならず。敵地ではぐずつかず。

      要地で先を越されたら攻めてはならず。諸国に通じる場所では諸侯と親交。

      敵地に深く入ったときは、結束を固める。始めは処女の如く後は脱兎の如く。

12.    用間 敵の情を知らざる者は不仁の至りなり。間諜の使用法に5種あり。

第13.   火攻 明主は戦闘を慎み、良将はこれを戒める。
       国を利する将軍は、短期決着による戦略的成功を追求する。 「了」

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