講演者:林野庁森林整備部研究・保全課 森林吸収源情報管理官 赤堀聡之氏
***「要旨」***
・京都議定書の締結後に、森林吸収源の取り扱いルール内容の交渉が後追いで
始まり、日本は交渉において、森林吸収源を3.8%分、認められた。
・今度のCOP16では、吸収源のルールは、先進国における扱いは合意にいた
っていない。
(1)京都議定書の方式「グロスネット方式」
(2)「ネット・ネット方式」
(3)「参照レベル方式」
(2),(3)が引きつづき議論を継続している。
・日本は、京都議定書の吸収源ルール「グロスネット」を認めてもらう方針で交
渉している。
しかし、2020年に向けた吸収量目標は、3.8%は難しい状況である。
麻生政権のときに試算した吸収量は、2.9%程度になる見込み。
理由は日本の森林が成熟期を過ぎて老齢林になる森林が多くなるためである。
・森林は成長量以下の伐採を続けて若返りの更新をする必要があり、国として
の支援策は継続する方針。
手入れ不足の間伐奨励策も、2020年まで継続する必要がある。
・森林の吸収源の機能に対し、伐採した樹木は伐採時点で「CO2排出」したと
カウントされる。
これは、京都議定書のルール制定時に合意され、樹木の輸出国側には不利と
の意見もあるが、2013年以降も継続する見通しである。
***質問に対して***
Q・日本が木材自給率を20%から50%に増加させる計画に対して
A:今までの輸入木材分は、輸出国側の排出であるが、国産材に転換した分は、
日本の「CO2排出」増加にカウントされる。
その排出増加分は、他の対策によって排出削減をする必要がある。
Q・間伐で切り捨てのままや、林地残材の扱いはどうしていくのか
A:伐採時で「CO2排出」とカウントされるので、間伐材や残材
の利用は、排出削減のカウント対象にはならない。
しかし、エネルギー利用などに積極的に活用して、化石燃料の消
費削減に結びつければ、実質的な「CO2排出」削減となる。
Q・「伐採木材製品」の取り扱い。
A:伐採後も木材製品(住宅、家具など)とすれば、炭素固定の効果があるから、
これを排出削減量に組み入れる提案が出されている。
しかし、算定方法が合意されない為に、引き続きの交渉・議論が行われる。
Q・森林吸収源の対する国内対策の今後の方向は。
A:吸収源としての森林経営ルールは、今後の交渉でさらに難しくなる見込み。
森林経営ルールの算定方式が、京都議定書時代と変更になれば、2.9%目標
の吸収源も、認められなくなる可能性がある。
Q・鳩山政権、菅政権になって、25%削減目標と言われているが、そのうちの
森林吸収源の目標値は何も指示がでていない。
A:前線の担当官としては、京都議定書ルールを前提に交渉を継続していくのみ。
民主党政権の25%削減は、中身の分担が明確でない。 ***現段階での結論***
国際交渉がどのように進展するにしても、
『日本の森林を適正に伐採して若返り更新を継続し、伐採した木質資源は、可能
な限り搬出して、エネルギー利用を徹底的に図る』
ことは、2020年までに継続する重要課題であることは間違いありません。
文責 渡辺 雅樹
尚正式な議事録は主催者の「国際緑化推進センター」より発行される予定です。