外資が水資源を狙っている著者のひとり、地理学者の安田は「山は市場原理主義と闘っている」(東洋経済新
報社、)などで、早くから日本の山の危機に警鐘を鳴らしてきた。
もと農林官僚だった東京財団の平野が、これを受けて詳細な報告をまとめたのが本
書である。
内容は極めて重いので、要約はなじまない。
先にお届けしたランド・ラッシュの「森と水」編である。
すでに読んでおられる方も多いと思われるので、ここでは目次を中心に一部加筆し
て紹介する。
Ⅰ. 日本を買え 平野秀樹
序章 外資に買収されてゆく日本
離島、港湾、空港、発電所、牧場、リゾートなど
第一章 狙われる日本の森
森が動きはじめた、急増する大規模森林取引、山ころがしも、誰が、
なぜ森を買う? 森はいま底値、伐採放棄の荒技と水狙い
第二章 日本の水が危ない
ウオーター・ウオーズ、グローバル化する水事業、黒船来襲だ、地下水が危な
い、安曇野の名水が涸れるとき、地下水は誰のものか
第三章 森が買われることの何が問題なのか
日本の私的土地所有権は特別、世界一の私権、土地制度で自滅する、フランス、
英米、ドイツの例、喉元まで及んでいる危機
第四章 日本には国家資産を守るルールがない
森と投資ファンド、外資とは、米国はどのようにブロックしているか、狙われた
ときの定石、EUのケース、日本の外国人土地法は機能せず、土地所有の規制は
アジアも常識、甘い日本は絶好の標的、国益意識なし
第五章 日本の森と水をまもるのは誰か
国家の重要資産、基本インフラとは、今も売り圧力がとまらない、外資が射程に
収めたもの、平和ボケで国土喪失しても縦割り官庁無策、森をまもる政策・地籍
の確定、売買規制と公有林化、林業再生を、水をまもる政策・地下水保全域の指
定、私水から公水へ
第六章 外資が日本を占有する日
辺境資源をどう評価するか、しのびよる外資が国土を占領する
Ⅱ. ニッポンの漂流を回避する 安田喜憲
1. 縄文時代が一万年以上持続した理由
地政学の再建、美しい日本列島こそが日本民族の起源、森をまもる文明、
2. 稲作漁労文明の持続性に学ぶ
畑作牧畜民は自然を収奪する文明で砂漠化へ、彼らの侵略から日本をまもる、
森・里・海の水の循環をまもった稲作漁労民の文明は持続する
3. 欧米文明による日本人の心の破壊
山の霊力に満ち溢れる日本の森、日本人の森崇拝のわけ、近代化の中で失われ
た日本人の心、
4. グローバル市場原理主義による破壊が始まった
欲望の文明の限界、中国奥地の森林は漢民族が荒廃させた、日本の領土の危機、
市場原理主義が日本民族を消滅させる、日本の山河も荒廃させる、
森の環境国家ニッポンの構築への提言
以上
2011年8月31日 吉澤有介