1.はじめに
塩原温泉にある温泉旅館“ 湯守 田中屋 ”では既設の重油焚給湯ボイラーの補助のバイオマスボイラーが活躍している。昨年の2月に続いて本年6月に再度訪問見学してバイオマスボイラーの状況を伺った。(株)田中屋の田中総支配人と地元企業でバイオマスボイラーを製造納品した(株)山形屋の加藤製造部長に丁寧な説明と案内をいただいた。田中総支配人の結論としてはバイオマスボイラーの導入は良かった、経済的にもペイするし、大変満足しているとのことであった。そこでその実績を知りたく後日バイオマスボイラー導入による重油(A重油)削減量の実績をお願いしたところ、心よく提供いただいたので以下報告する。
なお温泉旅館の給湯ボイラーの使用目的は温泉浴槽は源泉掛け流しで必要ないが、カラン、シャワー、調理場、洗面手洗いなどには真水(市水)を沸かしたお湯を使うので必要になる。
写真①
バイオマスボイラー定格出力56000~65000Kcal/h
上投入口は一次燃焼室、下は二次燃焼室
写真②燃料置場、右建築解体材、中央間伐材、左奥使用済み割りばし焚きつけに使う
写真③燃料用木材の貯木場、集積、乾燥、薪造りを行う
3.重油使用量削減実績
表1
図1重油購入量
図2バイオマスボイラー設置前後の重油購入量比較
4.効果の検討、確認、
①バイオマスボイラーの性能
定格出力は65〜75kw・56000〜66000kcal/h。 年340日18時間/日稼働とすると6.1×〖10〗^4 kcal×340日×18時間=3.7×〖10〗^8kcal、一方A重油の発熱量を9300Kcal/Lとすると36.8kl×9300kcal/L=3.4×〖10〗^8kcalとなる。 よってバイオマスボイラー1基でカバー出来ることになる。
②炭酸ガス削減量(出所 環境省エネルギー源別炭素排出係数による)
3.4×〖10〗^8 kcal÷〖10〗^10 kcal×2.9Gg=98.6トン 年間約100トンの削減となる。
③収支(本多の概算) 10年償却の条件で仮定する。
・収入 A重油90円/Lと仮定すると、 36.8KL/年×9万円×10年=3,300万円となる。
・支出
1)設備及び設置工事一式
ボイラー、貯湯タンク、熱交換器、ポンプ、煙突、配管一式、ボイラー小屋含む・・・・・・1300万円
2)メンテナンス費30万円/年×10年=300万円
3)燃料費
熊崎 実 木質バイオマスエネルギー利用推進協議会会長の石油1バーレル(159L)は木材1㎥に相当(概算)するによれば、重油36.8KLは木材231㎥になる。
間伐材は5円/kg~8円/kgで近くの森林組合などから受領できる。比重0.5とすると、約80万円/年、10年で約800万円となる。
4)人件費、運搬費、ボイラー運転、燃料製造収集などは、従来の従業員が仕事の合間に行っているので表にでないのでαとする。このバイオマスボイラーは完全燃焼するので灰の掃除は一週間に一度でよい。燃料は丸太のままでよいので、火持ちが良く、くべる回数も少なくてすむ。また薪割りも丸太のままでよいので必要ない等で手間は比較的少ない。
集材は軽トラック(既存)で運ぶ。一回1㎥積みで往復20kmとしてもガソリン代(ガソリン1〜2Lで重油159L(木材1㎥相当)を運ぶ)は少額である。
その他燃料として地元の大工さんから建築解体材の提供もある。
主な支出を集計すると、支出は設備及び設置工事費1300万円、メンテナンス費300万円、燃料費約800万円の2400万円+α(人件費、諸経費、先行投資利子など)となり、代替重油代3300万円に収まると推測する。今後重油価格が大幅に下がらない限りペイすると予測する。
5.おわりに
外国に支払う石油代金が地元へ還元される意義は大きい。地元企業へのバイオマスボイラーをはじめ、諸設備機器及び設置工事の発注、間伐材活用による林業活性化などによる地元経済の繁栄を期待出来る。また地元の大工さんや工務店よりの建築解体材燃料の提供による木材のカスケード活用利用は嬉しいニュースである。規模は小さくても、地元に合った木質バイオマスの材料とそのエネルギー活用を企画したい。今はバイオマスボイラーの製造数は少ないので、割高であるが発注数が増えてくればもっと安く調達することができる。安くなればバイオマスボイラーの利用が増え、海外へ支払っている石油代金を国内に還元出来、国内経済がより活性化するという良い流れにしたい。
最後にお忙しい中にもかかわらず,我々の質問に丁重に対応していただき、また重油削減実績資料を作成提供いただいた(株)田中屋の田中総支配人、(株)山形屋の加藤製造部長に心より御礼申しあげます。
お二人は環境問題にも熱心に取り組まれています。