原発は止めてしまえば安心ですか?

  原発の再稼働に賛成するか反対するかで意見が分かれている。国のエネルギー政策を決めるにあったってその方向を決めるのに世論調査や政治の場で決めていくのはおかしい。徹底的に議論し論理的に導かれる方向に沿って方針を決めていくべきである。東日本大災害発生から1年余が過ぎ,データーや専門家の意見がネットや書物で公開されつつある。それらを参考にどうあるべきか再考してみた。
今後予想される東海大地震を前に静岡県御前崎にある浜岡原発の全面廃炉が決定した。しかしここのプールに残る使用済み核燃料はそのままであり福島第一#4炉で発生したような全電源喪失による水素爆発の危険性はずっと続く。これは全国の原発が抱える基本問題で地震・津波・異常気象などの災害が発生する限り危険を内在する。

放射能の危険性
世の中に存在する色々な事故・災害の中で環境が破壊されても、かなりの部分はバクテリアなど有機物の働きで時間をかけて浄化されてきた。しかし放射能汚染だけは処理する方法が無く、環境に蓄積し、小さな生物を経由して人体に蓄積、病気や人命の危機まで左右し兼ねない。この汚染を防ぐ具体的な方策を実施できなければ人類に未来は無い。

青森県六ヶ所村の危険性
ここに建設している核燃料再処理工場には大問題が存在している。使用済燃料をここでウラン、プルトニウム、高レベル放射性廃液に分離、精製して核燃料の再生を行おうとする工場である。燃料棒を溶解するのに使われる濃硝酸は爆薬の原料である。またプルトニウムは原爆の材料であり核分裂反応でいつ大爆発するか分からない危険性を持っている。
高レベル放射性廃液は溶融炉によるガラス固化によって処分する試みであったが技術的問題から行き詰まってしまった。ガラスと廃液の混合物を電極に電流を流して固化するニクロム線加熱方式を採用した。ところが廃液に含まれる白金系物質は融点が高く、ニクロム線の10倍以上の導電性があるためニクロム線で発生する熱では溶けずに炉の出口ノズルに詰まってしまった。ガラス化が技術的に無理であることを証明した。
この工場で処理する燃料廃棄物は全国から運び込まれて3000トンある燃料プールはすでに満杯になってしまっている。また英仏より送り返されてきた高レベル放射性廃液もここに集められている。六ヶ所村には放射線廃棄物が集中していて「死の灰の墓場」とも呼ばれている。福島並みの災害に襲われたらこれら大量の物質から出る放射能によりどんな状況になるか想像もできない。

高速増殖炉「もんじゅ」
敦賀にあるもんじゅも問題が多い。再処理工場で作られるPu(プルトニウム)とウランの混合物(MOX燃料)を内層にし、外層にはU238をセットし炉で中性子を反応させるとU238は核分裂性のプルトニウム239に変化する。軽水型の炉では300前後の蒸気を使うのに対して増殖炉では500以上の液体ナトリウム金属を使う。このナトリウムは水と反応すると爆発し、空気に触れるだけで着火してしまう危険物である。

炉の熱を冷却するためナトリウム配管の外は水冷されていて運転中と停止中では500近い温度変化が発生し、配管の膨張・収縮を繰り返してストレスが高まっている。このため地震のような強い衝撃を受けると配管の脆弱部からナトリウムが漏れ、どんな災害が発生するか見当もつかない。ナトリウムの困難性から世界からこの技術への信用が失われている現在、日本だけが何故いつまでも固執しているのか理解できない。

使用済核廃棄物の保管
水のプールで冷却保管する湿式保管と乾式保管の2種類がある。湿式保管は電源喪失や配管漏れなどにより送水が止まると水素爆発を起こしてしまう。一方乾式方式は金属キャスターなどに閉じ込めるもので不活性ガス(Heなど)を使用して水素の発生を抑えた上、崩壊熱の除去には空気の自然対流を利用して行う。設備は貯蔵容器と保管建屋で構成されているので費用はかかるが災害など非常時に対する大きな不安は解消できる。使用済み核燃料が発生する都度この方式で処分していけば原発の不安のかなりの部分は解消できる。

                              記 福島 巖

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