ロンドン便り その9
3月20から22日までロンドンの新しい展示会場ExCelで行われた世界最大の建築関係の技術展Eco-build 2012を21日、22日の二日間にわたって見学しました。 Eco-build 2012の参加企業・団体は当地イギリスをはじめドイツ、フランス、イタリヤ、スエーデン、ノルウエー等のヨーロッパ諸国にロシア、ハンガリー等の東欧諸国やアメリカ、カナダ、メキシコ、ブラジル、日本、韓国、中国、インド、マレーシヤ等世界各国から1500社にのぼり、130の無料セミナーが行われ、入場者はデザインや建築・設計関係者の専門家約70,000人だった様です。
事務局のJames Blue氏の談話では、年々出展内容が変わってきており、特に今回は再生可能エネルギー関係の展示が大幅に増え、Micro-Renewable & Energy Efficiency (小型再生可能エネルギー機器とエネルギー効率)と題したブースが会場の1/3を占めており、地球温暖化防止への貢献がハイライトされているとのことでした。 ガイドブックを見ると、再生可能エネルギー関係で、特に太陽光発電(以下、PV)関係の出展企業は世界各国から212社と最も多く、日本からも京セラ、三菱電機、パナソニックが比較的大きなブースで出展していました。しかし、日本のトップメーカーシャープが本年3月期の業績不振での経費節減が理由なのか出展がなかったのと、逆にパナソニックの傘下に入った三洋がSanyoブランドで出展されていたのにはちょと驚きでもありました。
一方、世界最大手、中国のSuntechやドイツの最大手Q-Cellsも最大クラスのブースで出展していました。PV関係はPVパネルメーカーがほとんどで、これから需要が加速する世界のPV市場での熾烈なリーダー争いの中、一時期世界のトップだったアメリカのFirst Solarが数年前のドイツ市場の急拡大にドイツメーカーのQ-Cellsに生産量で世界一の座をゆずり、このQ-Cellsも今では中国のSuntechに世界一の座を奪われ、日本メーカーも含め価格競争にどこまでついて行けるか興味がつきません。
また、日本ではあまり見かけない、商業建築向けの建築材料(主にガラス)と一体化したBIPV(Built In PV)関係も36社が出展していました。
この中で、イギリスの建築や鉄道向け特殊ガラスの専門メーカーのRomag社だけが地味にPVの発電時の温度上昇を逆手に取って、この熱を不凍液で回収して温水をつくりだすPV-Tシステムを発表していました。これは、先にイギリスのゼロカーボンハウスに関してレポートしたPV-Tシステムと類似したもので、滞在中に時間を見つけて、北イングランドにあるRomag社の工場見学ができればと思っています。
バイオマス関係ではイギリスや北欧やヨーロッパ大陸のバイオマスボイラーや薪ストーブメーカー37社が出展していましたが、いずれも暖房と給湯需要向けのものでした。 また、コージェネ関係で11社が出展していましたが、その中で、イギリスの老舗のガス機器メーカーのBAXIが、Micro-CHP Baxi Ecogenの名前でガスエンジンで発電と給湯・暖房を行う住宅用のコージェネシステムをPRしていました。このシステムで発電した電気はFIT(固定価格買取制度)の対象になり、発電分すべてをグリッドに入れた場合は10p(13円)/kwh 、一部を自家使用し余った分をグリッドにいれた場合は3p(4円)/kwhとなり、元の発電燃料が再生可能エネルギーでないガスなので、PVのFITより安く設定されています。 いずれにしても、NFK/K-Betsが進めている超高温水蒸気ガス化炉発電システムに類似するものは見ることができませんでしたが、このことは、NFK/K-Betsシステムがいかにユニークでポテンシャルを秘めた素晴らしいシステムであるかを再認識させられました。
また、イギリス政府は昨年11月から第一段階として商業向けの全ての再生可能エネルギーによる発熱に対して、インセンテイブを付けるRHI Scheme(Renewable Heat Incentive Scheme – 再生熱利用インセンテイブ制度)の実施を発表しました。 対象になる再生可能エネルギーはバイオマスボイラー、バイオマスメタンガスボイラー、ヒートポンプ、太陽熱温水器です。
ちなみに、バイオマスボイラーのインセンテイブは熱出力200kwh以下は7.9p(10円)/kwh、201~1000kwhまでは4.9p(6.4円)/kwh、1000kwh以上は1.0p (1.3円)/kwhで、バイオメタンガスボイラーの場合は200kwh以下のみで、インセンテイブは6.8p(8.8円)/kwh、太陽熱温水器も200kwh以下が対象でインセンテイブは最も高く8.5p((11円)/kwhとなっています。 次に注目したのがヒートポンプ関係で56社が出展していました。この中には日本の三菱電機、三菱重工、ダイキンがそれぞれ大きなスペースで出展していました。
ヒートポンプはCOPが高くエネルギー効率が良いシステムであり、空気、水、グランド地熱、深度地熱のいずれのヒートポンプも前述のRHI制度の対象で、そのインセンテイブは熱出力100kwh以下は4.5p(5.8円)/kwh、100kwh以上は3.2p(4.1円)/kwhとなっており、いずれのRHIインセンテイブも向こう10年間にわったて支給されます。 イギリス政府は第二段階として住宅用のRHI制度を現在検討中で、今年末には発表されるのではないかと、住宅向けのバイオマスボイラー、薪ストーブ、太陽熱温水器、ヒートポンプメーカーは盛んにRHI制度によるインセンテイブをPRしていました。 これらのことは、2020年までに全熱需要の12%を再生熱で占めることを目標としている、イギリス政府の意気込みを感じました。
太陽光発電ブースの中央部 世界最大のPVメーカー中国のSuntech社
日本の出典社で最大の三菱電機の2階建ブース 唯一PV-Tを展示していたRomag社のブース
Romag社のPV-Tの表(発電部) Romag社のPV-T裏(熱回収部)
了