1.バイオマス資源のエネルギーとしての位置付け
バイオマスは太陽エネルギーの缶詰の形で地球上に薄く広く存在している。これを人類は生きるための食料や各種資源、エネルギーとして利用している。最も量の多い森林の木質バイオマスは薪炭として利用され重要な産業を形成していたが化石燃料の出現と共に衰退していった。
近年温室ガス排出による地球環境問題からクリーンエネルギーとして再度注目を浴びている。しかし風力、地熱、太陽光などの自然エネルギーに比べて採取可能量が少ないことから注目されるに至っていない。
将来の脱原子力の代替エネルギーとなる貴重な資源として再活用に注力していきたい。
エネルギーとして利用するための制限条件を以下にまとめてみる。
(1)資材としての活用を優先してエネルギー使用のための乱開発を禁止する
数十年かけて育てた木質バイオマスは建築用材、紙パルプその他の資材としてまず活用するのを優先すべきである。エネルギーを得るために大量に輸入を図るとか大規模伐採をして集材するといった事態は避けたい。資材として使い終わった廃材や加工中に発生した不良品、屑は最終的にエネルギーに転換していく。現在建築廃材410万トンの90%、および製材所発生残材340万トンの95%は再利用されている。
(2)輸送距離の少ない地産地消に徹する
木質バイオマスはエネルギー密度が小さいので長距離輸送をしてはならない。
化石燃料に対して単位重量・単位容量当たりの発熱量が低い。木材の水分%によるが重油に対して1/3(乾燥材)、1/6(伐採直後)であり燃料を使った輸送距離は最小に留める必要がある。車による運搬エネルギーと木材の持つエネルギー量を比べてみる。
木材1トンをトラック1台で運ぶとした場合輸送距離が10kmだと約1%、50kmで5%、100kmも運ぶと10%のロスが発生する。
場所を移動しての加工も制限し、同一地域内(市町村)での産出・消費ができることが理想である。
(3)日本の特殊事情を考慮すべきこと
戦後政府の補助金政策により植えられたスギやヒノキの人工林が50余年を経て成長してきたが管理を怠ったため惨憺たる状況になっている。この再生のためには間伐を実施して太陽光を森林の中に通して下草や小木を育て微生物や昆虫の住む生息環境を作っていかなければならない。今のままの人工林では樹木の根が地中深く進入しないため木が大きく育たないのと地球温暖化で凶暴になった自然災害で大きな被害を発生する可能性が大きくなってきている。
京都議定書が発端となり炭酸ガス吸収源対策として政府の補助金を受けてここ数年間伐作業は進んでいる。しかしその実態は木を育てる環境作りというより補助金目当ての作業に終始してしまい、伐採するだけで現地に捨てられてしまっている。大雨が降ったときこれらがダム湖に流失し別の災害を引き起こす原因になっている。
放置されて腐ってしまうとメタンガスなど温室効果ガスとしては炭酸ガスより数倍悪影響を与えるガスを発生し地球環境にマイナス要因になる。
この現地残材がなんら使用されることなく山林に放置されていることが問題である。
年間に発生する約800万トンをエネルギーに換算すると原油約270万t(25万tタンカー11台相当分、原油総輸入量の約1%)の資源に相当する。これらを生かして日本製エネルギーとするためにバイオマス発電が必要と考える。
2.山林を維持管理するために必要なこと
間伐作業が何故進まないか?
作業しても採算が合わないからやらないだけである。
これらをエネルギー資源として活用するためには伐採から収集・運搬・加工を通した費用を超える収益が見込まれないと成立しない。
それではどのようにして収益をあげていくか?
(1)熱として利用する
薪、チップ、ペレットなどの形でストーブやボイラーなどを使った暖房目的の利用がある。ペレットなどに加工して燃料密度をアップ、自動燃焼管理する方法等研究が進んでいる。最近はEUなどの技術開発により燃焼技術が進歩して95%を超える完全燃焼に近い例もある。熱利用は最も効率的な良い使い方であり、公共設備の暖房やプール、温泉などへの給湯などには向いている。しかし個々の家庭で使う場合には対象が多数で複雑対応に問題がある。一方給湯利用だけでは石油やガスの使用量が減るメリットはあるが積極的な収益を生じることにはならない。
(2)電力と給湯の併用
バイオマス発電は地域の小容量の発電に限定せざるを得ずその発電効率は10%~20%と低いレベルしか想定できない。これを可能にするには発電の際に付随して発生する熱を回収して全体の熱効率を上げるコジェネシステムを作り上げるしかない。
当NPOでは研究開発を進めて高温水蒸気を利用したガス化炉を作り高カロリーガスで直接ジーゼル発電することでバイオマス電力を得る可能性を得ている。
この電力を太陽光並みの高い固定価格で買い取りが可能になればこれを目標に集材・運搬費用の低減、発電技術の開発等が活発になり電力を売ることで日本の山林間伐が進み新しい産業の誕生にまで直結する可能性があるのではないかと期待している。
(3)集材コストの低減
木質バオイマスの最大の問題点は集材・運搬に多額の費用がかかりコストバランスが取れないことである。作業合理化のためには日本の山に適した集材システムの構築など現場の努力と林業活動を強力に推進する地方自治体、山主、施業者が一体となった組織が必要になる。その上で大量に、コンスタントに仕事が継続できる基盤がないと事業を続けることが難しい。このキッカケを作るのは補助金制度であり、今までのような伐採量に応じて支払う補助金制度ではだめである。
今回の固定価格買取り制度は関係者に与える大きな努力目標になりこれに向かって様々な試みがなされ成果が期待できる。その中心をなすのが地域の製材所でありいくつかの製材所をまとめて作る集材センターである。そこに誰でもが軽トラで材を持ち込めばある価格で買い取って貰えることができるシステムを作れば自然と地域が活性化するはずである。
3.バイオマス発電所の規模と固定価格買取り制度
現在国内に稼働中のバイオマス発電所は非常に少ない。これらの発電規模は最大33MWから12~13MWクラスと大型施設に偏っている。調達する木材チップも年間10から18万tであり建築廃材を目標に集めたものや外国からの輸入を前提とした工場もある。これらの発電所が現在抱える問題はチップの高騰により採算が悪化していること。’07年1,000円/tと見ていたチップの価格が各所で混焼が始まり取り合いになった結果大幅にアップしてしまった。同時に建築廃材のチップが集められなくなってしまい材料不足で稼動率を維持できなくなっている。間伐材から作るチップは現在7,000~15,000円/tにも達していて、コストダウンを図るのは勿論であるが建築廃材とは全く別の問題があることを前提に考える必要がある。
(1)発電所の規模
木質バイオマスは山林から発生する間伐材や公園や家庭で発生する剪定材などとすべきで発電所が存在する地域で循環しているチップの量に限定するべきである。
(2)バイオマス発電の対象範囲
大規模発電所が石炭などの代替として木質バイオマスを利用するのは買取り制度の対象から外す。
(3)発電所の発電規模別に料金設定を変える
設備の建設費用、電気変換効率や運転費用などは発電容量と密接な関係があり小規模発電のハンディキャップは大きい。それら条件を加味して検討すると
発電容量とFIT価格
発電容量 |
固定買取り価格 | 推定実績値 | 備考 |
500 kw以下 | 40円/kwh | 100kwで50円/kwh | 熱電併用条件 |
2,000 kw以下 | 30円/kwh | 熱電併用条件 | |
20,000 kw以下 | 20円/kwh |
(4)小規模発電は給湯設備を併設して発電の際発生する温湯を給湯設備で有効利用しないとコスト的に成り立たない。これら発電、給湯設備を備える設備一式に対して優遇政策を推進すべきである。
4.地域経済の活性化
このような形で間伐材がエネルギーに代わり化石燃料の購入が減ると外国に支払っていたお金が労働賃金になって地域を循環し活力を生むことになる。