日本で稼働中の木質バイオマス発電所
稼働中3発電所と計画中のものをとりあげ発電方式、発電効率、発電所の課題を検討しました。
吾妻・木質バイオマス発電所
発電方式:蒸気タービンによる汽力発電方式
主燃料:木質チップ:(群馬県内および近隣県の木質チップ業者から購入)
年間使用量:約13万t
発電規模:13,600kW(発電端出力)
年間送電量:8,500万kWh(約24,000世帯分の年間電力使用量に相当)
営業運転開始:2011年10月
大分・木質バイオマス発電所
事業内容 :木質チップのみで発電中
発電量 :12,000kw(約22,700世帯分)
燃料使用量: 年間約10万tの木質チップ
燃料ストック量 :約12,000t(2007年2月現在)
稼働時間 :24時間
商業運転開始: 平成18(2006)年11月
主な設備:流動床ボイラー、蒸気タービン発電設備
川崎・木質バイオマス発電所
発電規模33,000 kW(バイオマス専焼設備としては国内最大)
燃料木質バイオマス(計画使用量18万トン/年)
主要設備発電設備 (循環流動層ボイラー、タービン発電機、冷却塔方式)、
大気環境設備(排煙脱硫設備、排煙脱硝設備、除塵装置)、排水処理設備
2011(H23)2月竣工 営業運転開始
震災がれきでバイオマス発電計画
農林省、被災地に建設計画 (2011年6月11日記事)
東日本大震災で生じたがれきを燃料に使う「木質バイオマス発電」の普及に農林水産省が乗り出す。被災地に出力1万キロワット級の発電所を5カ所程度建設する計画。
発電で生じる熱を給湯や暖房に利用するシステムも加え、効率的なエネルギー利用を目指す。環境省の推計では、がれき全体で2500万トンに及び、うち7割が木質系の廃棄物とみられる。農水省は、約500万トンが利用でき、数年は発電できるとみている。
考察1:木質バイオマス発電の効率推定
項目
原料使用量
|
単位 t/年 |
吾妻 約13万 |
大分 約10万
|
川崎 約18万 |
*1)原料木質チップ発熱量(20%含水率)=3,456Kcal/kgを仮定
*2)稼動時間:吾妻発電所の送電量(Kwh)/出力(Kw)=6250(hr)=260日と仮定
考察2:
a.木質バイオマス発電方式
方式-1:燃焼ボイラー + スチームタービン発電
→既存の木質バイオマス発電方式(前述3発電所)
方式-2:燃焼(部分酸化)ガス化 + ガスタービン発電
→500~600℃まで熱し、可燃ガスを生成(木材の約80%)。
酸素不足の中でCO、バイオマスに含まれる水分からは H2発生
→参考:発酵によるガスの抽出方法も研究
方式-3:スチーム・ガス化 + ディーゼルエンジン発電
→ NFK炉による超高温スチーム・ガス化炉+発電
b.木質バイオマスのガス化
木質チップの元素組成:岩手県工業技術センター研究報告第12号(2005)
/wt % |
灰分 0.4 |
C 51 |
H 6.1 |
O 42.3 |
N 0.1 |
S 0.1 |
H/C=6.1/51=0.12 (wt比)=1.44(mol比)
木質チップ: CnHm とすると m/n=1.44
木質チップのガス化後(合成ガス)の量論組成<方式-2と3>
<O2> ガス化: CnHm + (x)O2 → (n)CO + (m/2) H2
H2/CO= 1.44/2 =0.72 (mol比) = 0.051(wt比)
<H2O>ガス化: CnHm + (n) H2O → (n)CO + (m/2 +n) H2
H2/CO= 1.44/2+ 1=1.72 (mol比) = 0.123(wt比)
C.合成ガスの発熱量試算
COの標準燃焼熱(25℃、1atm): 2,416 Kcal/kg (LHV)
H2 の標準燃焼熱(25℃、1atm): 28,900 Kcal/kg (LHV)
木質バイオマスのガス化<方式-2 と3の比較>
<O2>ガス化後の合成発熱量(標準状態) =3,677 Kcal/kg
< H2O>ガス化後の合成発熱量(標準状態)=5,317 Kcal/kg
• 参考:CH4 の< H2O>ガス化
CH4 + H2O →CO + 3 H2 H2/CO = 3(mol比) =0.214 (Wt比) 合成発熱量(標準状態)=7,090 Kcal/kg
Cf :CH4のLHV =12,000Kcal/kg
木質バイオマス発電の課題
㈱ファーストエスコ資料(2009年12月10日)より抜粋{岩国、白川、日田のウッドパワー発電所の運営}
(1)木材チップ価格高騰:
1000円/ton@2007年 → 3000~4000円/ton@2009年
2007年以降に製紙・セメント・電力企業などがCO2排出削減の為に木材チップを補助燃料とした混焼を拡大した結果、需要超過
(2)燃料材不足:
各発電所の必要燃料材は、11~12万ton/年だが、実際の 調達量は70~80%しか確保できない。従って設備稼動率は60%程度に落ちている。
(3)電力・RPS取引価格問題:
電力価格:電力業者間の取引と同一条件の価格
RPS価格:4~5円/Kwh ⇒全量固定価格買取制度の導入要
*)RPS (Renewable Portfolio Standard)法:
「電気事業者による新エネルギ等の利用に関する特別措置法」
新エネルギーから発電される電気を一定割合以上利用することを義務づけ、再生エネルギー(太陽光、風力、中小水力、バイオマス、地熱)の普及を促進する。