木質バイオマス発電の概要     2011年12月16日 進藤昭夫

日本で稼働中の木質バイオマス発電所

稼働中3発電所と計画中のものをとりあげ発電方式、発電効率、発電所の課題を検討しました。

  

吾妻・木質バイオマス発電所
発電方式:蒸気タービンによる汽力発電方式
主燃料:木質チップ:(群馬県内および近隣県の木質チップ業者から購入)

年間使用量:約13万t
発電規模:13,600kW(発電端出力)
年間送電量:8,500万kWh(約24,000世帯分の年間電力使用量に相当)
営業運転開始:201110

大分・木質バイオマス発電所
事業内容 :木質チップのみで発電中
発電量 :12,000kw(約22,700世帯分)
燃料使用量: 年間約10tの木質チップ
燃料ストック量 :約12,000t20072月現在)
稼働時間 :24時間
商業運転開始: 平成182006)年11
主な設備:流動床ボイラー、蒸気タービン発電設備


 
川崎・木質バイオマス発電所
発電規模33,000 kW(バイオマス専焼設備としては国内最大)
燃料木質バイオマス(計画使用量18万トン/年)
主要設備発電設備 (循環流動層ボイラー、タービン発電機、冷却塔方式)、
大気環境設備(排煙脱硫設備、排煙脱硝設備、除塵装置)、排水処理設備
2011
H232月竣工 営業運転開始


震災がれきでバイオマス発電計画
 
農林省、被災地に建設計画 2011611日記事)

東日本大震災で生じたがれきを燃料に使う「木質バイオマス発電」の普及に農林水産省が乗り出す。被災地に出力1万キロワット級発電所を5カ所程度建設する計画。

発電で生じる熱を給湯や暖房に利用するシステムも加え、効率的なエネルギー利用を目指す。環境省の推計では、がれき全体で2500万トンに及び、うち7割が木質系の廃棄物とみられる。農水省は、約500万トンが利用でき、数年は発電できるとみている。


考察1:木質バイオマス発電の効率推定

項目

原料使用量

稼働時間

原料量
発熱量(A)
発電規模
熱量換算(B)
推定効率B/A

単位

t/年
hr/年
kg/hr
106kcal/hr
kw
106kcal/hr
%
 

吾妻

約13万
6250
20,800
71.9
13,600
11.7
16.3

大分

約10万
6250
16,000
55.3
12,000
10.3
18.7

  

川崎

約18万
6250
28,800
99.5
33,000
28.4
28.5

*1)原料木質チップ発熱量(20%含水率)3,456Kcal/kgを仮定 

2)稼動時間:吾妻発電所の送電量(Kwh)/出力(Kw)=6250(hr)=260日と仮定

考察2:
a.木質バイオマス発電方式


方式-1
:燃焼ボイラー + スチームタービン発電
   →既存の木質バイオマス発電方式(前述3発電所)

方式-2:燃焼(部分酸化)ガス化 + ガスタービン発電

   →500600まで熱し、可燃ガスを生成(木材の約80%)。
   酸素不足の中でCOバイオマスに含まれる水分からは H発生

   →参考:発酵によるガスの抽出方法も研究

方式-3
:スチーム・ガス化 + ディーゼルエンジン発電

   → NFK炉による超高温スチーム・ガス化炉+発電


.木質バイオマスのガス化

木質チップの元素組成:岩手県工業技術センター研究報告第12号(2005)

/wt %

灰分

0.4

C

51

H

6.1

O

42.3

N

0.1

S

0.1

H/C=6.1/51=0.12 (wt比)=1.44(mol比)

木質チップ: CnHm とすると m/n=1.44

木質チップのガス化後(合成ガス)の量論組成<方式-23

 <O> ガス化: CnHm + xO2 → (nCO + (m/2) H

          H/CO= 1.44/2 =0.72 (mol比) = 0.051(wt比)

H2O>ガス化: CnHm + (n) HO → (n)CO + (m/2 +n) H

        H/CO= 1.44/2+ 1=1.72 (mol比) = 0.123(wt比)


.合成ガスの発熱量試算

COの標準燃焼熱(25atm):  2,416 Kcal/kg (LHV)

H2 の標準燃焼熱(25atm) 28,900 Kcal/kg (LHV)

木質バイオマスのガス化<方式-2 3の比較>

O2>ガス化後の合成発熱量(標準状態)  3,677 Kcal/kg

HO>ガス化後の合成発熱量(標準状態)=5,317 Kcal/kg

       参考:CH の< HO>ガス化

     CH + HO →CO + 3 H    H/CO = 3mol比) =0.214 (Wt比)   合成発熱量(標準状態)=7,090 Kcal/kg

                  Cf :CHLHV 12,000Kcal/kg


木質バイオマス発電の課題

㈱ファーストエスコ資料(20091210日)より抜粋{岩国、白川、日田のウッドパワー発電所の運営}

(1)木材チップ価格高騰:

  1000/ton@2007年 → 30004000/ton@2009

  2007年以降に製紙・セメント・電力企業などがCO2排出削減の為に木材チップを補助燃料とした混焼を拡大した結果、需要超過

(2)燃料材不足:

  各発電所の必要燃料材は、1112ton/年だが、実際の 調達量は7080%しか確保できない。従って設備稼動率は60%程度に落ちている。

(3)電力・RPS取引価格問題:  

  電力価格:電力業者間の取引と同一条件の価格

  RPS価格:45/Kwh 全量固定価格買取制度の導入要

*)RPS (Renewable Portfolio Standard)法:
「電気事業者による新エネルギ等の利用に関する特別措置法」
新エネルギーから発電される電気を一定割合以上利用することを義務づけ、再生エネルギー(太陽光、風力、中小水力、バイオマス、地熱)の普及を促進する。

カテゴリー: バイオマスの燃料利用 パーマリンク