技術者がバイオマスを語る(1)
私たちはバイオマスを選択した。きっかけはある論文である。
その論文には「地球上で成長する植物(バイオマス)をエネルギーに換算すると人類が使用するエネルギーの8~10倍になる」と書かれていた。
新鮮な驚きであった何人かの専門家に確認するとその通りとのことであった。
しかしながら、これほど多量のエネルギーが現在ではほとんど使われていない。理由は明白である。化石燃料と違って、ひろく薄く分布しており、体積当たりのエネルギー量が少ないことから、貯蔵や運搬に適さないからである。20世紀後半の大量生産、大量消費、効率最優先の時代には受け入れられるはずがなかった。私たちはむしろこのことに惹かれた。大量生産、大量消費、効率最優先の時代は今後も続く。が色々な出来事をきっかけに世界のあちこちで変化の兆しが芽生えている。効率はそれほど良くはないが地域に根差し、助け合い、小規模で手間ヒマはかかるが人間的で温かい手法に目を向ける人々が増えはじめた。「エネルギー分野でもそうありたい」というのが我々の原点である。地産地消、小規模分散型で食料と競合しない木質や藻などを巧みな技術で使いやすいエネルギーに変換したい。 40年以上、いろいろな工業分野で技術の真髄を体得してきた会員の総力を結集すれば、「小規模ではあってもそこそこの効率を達成できるのではないか」というのが私たちのうぬぼれである。 シロアリが体内に宿す微生物を解明すれば、木から容易にエタノールを作ることが出来る。牛の胃袋から同じような微生物が発見された。藻の成長は早く、同じ面積からトウモロコシや大豆の100倍の収量が可能などなど、バイオマスの分野では技術者をワクワクさせる材料に事欠かない。大きな未知の可能性を感じる。そして、私たちにも古代から木をこよなく愛してきた日本人のDNAが間違いなく受け継がれている。我々が得意とする工業分野の技術を駆使して、小規模分散型であっても社会に受け入れられるバイオマスエネルギーの利用技術の開発に全力を尽くしたい。