英国に学ぶ住宅観 その1 Aug. 4. 2011 荒川英敏

ロンドン便り その3-1
今こそ「街並みとセットされた長期優良住宅」の建設を!
日本の住宅のあるべき姿が英国にある!

未曾有の筆舌に尽くしがたい甚大な被害、東日本大震災から5ヶ月になろうとし
ており、
復興に官民をあげて取組んでいますが、津波で破壊された沿岸部の街並み
の再生に、住宅地を高台に漁業関連施設は港の近くに造る方法や、または従来通り、
港を中心に街並みを
構成し、津波対策にはより高く強固な津波堤防を造る案もある
ようですが、今一つ見えないの
が復興に「街並みをセットした長期優良住宅」のコ
ンセプトが取り入れられているかどうかである。

現在、仮設住宅や被災地域外に避難している被災者個々の要望に応じた、これま
で通りの住宅造りをするのか、あるいは集合住宅にするのか、いずれにしても
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10年単位の時間が掛かることであり、そうであるならばもう一度原点に戻り、先
進国の街並み造りの手法を取り
入れ、いわゆる「街並みとセットされた長期優良住
宅」のコンセプトを取り入れるべきだと考えます。

先進国の街並み造りで見本となるのが英国です。
1850年代のビクトリア女王の時代、人口の急増に対応する為、時の政府が行った
「街並みとセットされた長期優良住宅」を都市計画のマスタープランに基づい
て、粛々と建設を進めたその当時のロンドンの街並みが、現代のロンドンの街並
みになっている現実を見ると、住宅造りは街並み造りであり、都市造りでもある
のです。
先の大戦で、焼け野が原から都市を復興再生する時が
「街並みとセットされた長期優良住宅」
を建設する機会であったのですが、残念ながらかないませんでしたが、今回の大震
災での復興はまさに「街並みとセットされた長期優良住宅」を建設する絶好の機会
であります。

もしもの話でありますが、戦後日本は戦勝国で構成されたいわゆる連合国、つま
り米国主導によって国造りが行われ今日の姿になっていると言っても過言でないと
思います

もしこれが英国主導での国造りが行われていたならば、西欧諸国並みに「街並みと
セットされた
長期優良住宅」が建設され、環境に配慮された街並みや都市造りが行
われていたのではないかと思ったりする次第です。
日本でも国土交通省が打ち出している「長期優良住宅構想」はハードである住宅
だけを
語っており、やはり住宅造りは街造りであると同時に住む人や行き交う人々
に安堵感を与える
都市造りでもある訳です。
つまりソフトである住宅本来の住み心地と街並み、環境が一体にならなければ片手
落ちであ
ります。しかし英国の完成度の極めて高い住宅や街並みを見ていますと、
日本が求めている住宅や街並みの、本来のあるべき姿が英国にあると思えてならな
いので
す。

それでは、もう少し具体的に英国の住宅事情について話しをしてみたいと思います。
英国は日本と同じ島国であり、6000万人もの人々が日本の本州とほぼ同じ面積に居住
しています。しかし、
山間部が少なく平野部が70(日本は逆に山間部が多く約30%
が平野部)なので日本よりはゆったりとした感じがします。
人口は
どうしても都市部に集中しがちな為、一戸当たりの住宅のスペースは必ずしも
日本よりは広いとは言
えないですがマンションを除く全ての住宅に庭があるので、
住宅の庭を含めた生活空間は多分日本の
3倍位はありそうです。
さらに
英国の住宅はレンガと石を使った長寿命住宅で、イングリッシュガーデンに象
徴される庭を住宅の前と後ろに上手に配置し
周囲の環境に配慮した手法は英国の先
人達の知恵
であり大いに学ぶべきであろうと思います。

首都ロンドン

ロンドンは人口700万のヨーロッパ最大の都市でもありますが、とにかく緑が多く、
至るところに公園があり、歩道と街路樹と街路灯がセットになっており、見苦しい電
柱や看板はまったくありません。
(看板は指定された場所のみで、例えばオックスフォードストリートやピカデリサー
カス等の繁華街や
商店街、駅や空港の出入り口等)住宅はレンガと石くりのため、
100年や200年たったものが無数にあり中には300年以上も経った住宅もめずらしくは
ありません。

また、当局はロンドン郊外にグリーンベルトと呼ばれる幅1020kmの公園や森の緑
地を組み込んだ緩衝地域をロンドンを囲むように造っており市街地の
郊外への膨張を
厳しく規制しているのです。
これはロンドンだけでなく、バーミンガムやマンチェスター等の他の大都市でも同様
にグリーンベルトで規制をかけているのです。          

ロンドンの中心部にはテームズ川が流れており川に沿って国会議事堂、官公庁街と
続きそして女王陛下のお住まいでありますバッキンガム宮殿があります。
写真はバッキンガム宮殿とセントジェームスパーク、グリーンパークと東京の皇居を
思わせる緑地や公園がロンドンの真中にあります。
手前の宮殿の敷地以外は全て市民に開放されています。
この他にもハイドパーク、リージェントパーク、バタシーパーク、キュウガーデン、
ウインブルドンパーク等の大公園をはじめ中小の公園が無数あり市民の憩いの場所が
いたるところにあるわけです。
データ
によりますと市民一人当りの公園面積は東京の10倍の約30㎡となっています。


11.jpg バッキンガム宮殿(手前)、セントジェームスパーク(奥)、グリーンパーク(左)05.jpgキューガーデン(ロンドンの西の公園)、奥にテームズ川が見えます

e13.JPG

イーリング区の駅前公園

ロンドンのいたるところで見られる平均的な住宅街で車道,歩道、街路樹、街路灯
がセットでしっかりと出来上がっています。
後述しますが、
英国では基本的に電配線や電話線の電柱がありません。

 

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