資源小国の日本を救うバイオ燃料こそ地産地消で 小林 隆夫

 我々は東工大OBを中心に様々な現場をくぐり抜けててきた技術者集団で、永年培った経験・技術を生かしバイオマスエネルギーの活用を通じて、子孫に少しでも良い地球環境を残したいとの想いでNPOを結成した。輸送用バイオ燃料の利用促進を明確化した“新たなバイオマス・ニッポン総合戦略”を受け、平成19年2月に国産バイオ燃料の大幅な生産拡大に向けた行程表が関係7府省でとりまとめられ、地球温暖化防止のみならず国内未利用資源の有効活用と、農業や林業の振興を通して地域の活性化や雇用拡大にもつながると報じられた。  

 穀物、サトウキビや木材などから作られるエタノールを自動車燃料として使う場合、一定割合をガソリンと直接混ぜる方式と、石油精製の副産物であるイソブテンとエタノールを合成したETBEという物質にしてガソリンと混ぜる方式(バイオETBE)の2種類がある。 直接混合方式では環境省の補助金を得て、各地で原料選択・製造技術・供給方式を対象としての実証事業が進められている。一方、石油連盟はこの方式では水分の混入によってエタノールとガソリンに分離するので品質管理が難しいことなどを理由に「バイオETBE」の普及を主張している。

 地産地消を基本に!!                                                               

 石油連盟は平成22年までにバイオETBEを年間21万キロリットル販売する計画を立ててはいるものの、京都議定書目標達成の50万キロリットルには遠く及ばない。イソブテンは、石油精製の副産物とはいえ、石油製品には違いなく、量的にも限界があり地球温暖化対策に合致するとは思えない。このままでは折角芽生えたエタノール燃料普及活動の芽を摘んでしまうことになりかねない。直接混合方式は世界の主流であり、バイオマス資源から生産されるエタノールを産地で混合出来るのに対して、石連方式は出来たエタノールをわざわざ製油工場まで輸送し、大規模な石油装置内でイソブテンと反応させてETBEをつくり、その後にガソリンと混合するという煩雑な手順で、このために多くのエネルギーを使うことになり、バイオETBEを選択した根拠には疑義がある。広く薄く散在するバイオ資源をうまく活用するには地産地消を基本に考えるべきであり、離島や遠隔地対策にも有効である。

幅広く高い視野で!!                                                                 

 世界的にはエタノールの生産が食料品の高騰を招き、森林破壊を惹き起こしているとの指摘もあり、国内でもよく検証しなくてはならないが、未利用資源を活用して地下資源の利用を抑制すれば、資源の少ない日本の基本戦略となり得る。直接混合方式では自動車エンジンの性能低下が避けられないというのであれば、消費者側も少々のことは我慢をすることも必要であると認識するので、石連の主張する問題点について具体的な内容の開示があれば、一般消費者を巻き込んでの世論作りに努める覚悟である。

 バイオ燃料供給方式の決定には、品質や安定性・経済性、ガソリン税、食糧の安全保障問題等数多くの課題があるが、自動車業界も巻き込んで、石油由来の製品からではなく、環境省計画の3%混合を出発点として、さらに高い配合率を目指し各地域の実情に適した、技術立国を標榜する日本が世界に喧伝できる独自モデルの開発を期待したい。
 (小林隆夫記) 

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