バイオブタノール開発生産の勧め       2010.7.9 

 近年アメリカではブタノールの生産計画を、エタノールよりも車に優しい燃焼特性があるとして大企業・ベンチャー共に推進し始めている。(世界のバイオマスニュース)
BPとDaniscoButamax Advanced Biofuels LLCを設立し2012年ブタノールの生産を始める。
2013年にはコーンエタノールとコスト的に競争出来るであろうと期待されている。
Butamax2013年にブラジル(原料サトウキビか)とイギリス(原料は小麦か)に工場を作りブタノールの増産を始める予定である。
 なぜブタノールはエタノールに比較して有利なのか。
ブタノールはエタノールに比較して分子構造的にガソリンに近く、種々利点がある。
まずエタノールは燃焼熱がガソリンの2/3しかないが、ブタノールはほぼ同等である。
ガソリンへの混合率限界はエタノール10(アメリカの基準)であるがブタノールは16%まで可能である。
ブタノールはエタノール、ディーゼルとの混合も出来る。
化学便覧(1958年版)によるとエタノールは水への溶解度は無限大であるが、ブタノールの場合は17%しか溶けず、水があってもブタノールとして分離している。
原料は蔗糖(糖類)、トウモロコシ(澱粉)、小麦(澱粉)、トウモロコシの葉、茎(セルロース)、木材(セルロース)などが対象である。特にセルロースの糖は2/kg(18/kg)とBPは安価で用意しているようである。
Butamaxはどんな微生物を使っているのかは発表していない。
 ベンチャーとしてはCobalt Technology, Gevo Incが実施しようとしている。
obaltは植物セルロース、穀類を原料として2014年には生産量1500-5000万ガロン(5.9-18.9kl)を計画、2014年にはコ-ンエタノールとコスト的に競争できるとしている。

Gevo
はエタノールの工場を改造し多国籍石油大手の投資を受けて、イソブタノールの生産を行う。2012年に100万ガロン(0.38kl)生産予定である。
トウモロコシ及びその葉、木材を原料とし、菌としてはイーストを使うようである。 このようにアメリカがブタノールの生産にシフトしようとしている。
しかし日本では企業や官からそのような話は出ていない。
日本では戦争中、醗酵でブタノールの生産を実施していた。
それはブタノールからイソオクタン(アンチノック剤)を作り戦闘機に使うための軍事産業であった。戦後にはソルベントの産業として継続されていたが、石油化学の勃興により消失してしまった。
日本にはその技術があり、有胞子桿菌(Clostridrium acetobuchirikum)を使い、糖蜜を利用して生産していた。
アセトン、ブタノール、エタノールが361の比率であったという記録がある。
車の燃料に使う場合には、混合物であることは問題ないはずである。
60年前の技術は収率だとか、コストだとか問題があると思うがもう一度そのような技術を舞台に引き出して検討してみることが必要ではないか。
   

          記 廣谷 精 

 自動車用燃料としてのバイオ燃料―エタノールとブタノール 

(1)燃費性能
エタノールは燃費性能が大きく落ちる。
ブタノールは発熱量が大きくガソリンとほぼ同等である。

(2)エタノールの水分吸着性
エタノールは水分を吸収する点が燃料としての弱点である。
ブタノールは油と水が分離するので水分を取り出すことができる。 

(3)自動車のような耐久消費財にはエタノール使用による部品の腐食性懸念は大問題である。 ブラジルや、アメリカの[E85]クラスの燃料(混合率が高い)ではこの腐食対策に大きなコスト負担を強いられる。腐食のためある期間が過ぎると部品の交換を強いられる懸念がある。 

(4)日本では、ガソリンへの混合率が低い(5%、10%レベル)のでエタノール燃料の弱点は容認できる範囲であるがバイオ燃料の普及をもっと広める段階には問題が出る可能性がある。 しかしエタノール燃料の製造コストでもまだガソリンに比較して難点がある。
これより難度の高いブタノール製造のコスト引き下げには企業やベンチャーの研究開発と投資計画が必須だと考えている。

 記  渡辺 雅樹


ブタノールButyl alcohols
化学式C4H10Oで表される炭素数4の一価アルコールの総称である。
ブタノール類はいずれも可燃性であり、特に1-ブタノールは溶媒や燃料としてよく用いられ、他のブタノール類は香料や医薬品など化成品原料として用いられる。
いずれも日本では消防法により危険物第4類(可燃性液体)第2石油類に指定されている。
4種類の異性体がありますが、バイオマス由来であれば、ノルマルブチルアルコールとイソブチルアルコールです。
ブタン(C4H10) は主としてプロパンと混合してLPGとして使われているガスです。

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