上野村の見学会はBIN,農都部会WG,K-BETS の3団体の共催で7月17,18日に行われた。
参加者は20名で当会からは米谷・清田・岩田の3名が出席した。
上野村は群馬県一人口の小さな村です。このまま成り行きに任せると消滅の危機を迎える。村長以下村民一体となって如何にして人口の減少を食い止めるかに取り組んできた。村の96%を占める森林を活用して働く場所を作り出すべく村の事業として「きのこセンター」を始めた。呼びかけに答えてアイターン(都会から移住)して定住した人が増え(17%)て現状がある。村民1500人を目標に更に働く場所の確保と子育て支援などを行うためにガス化熱電併給所の建設など鋭意取り組んでいる。
(1)製材所
製材所は今年稼働した全自動の製材機を中心に操業を行っている。製品は3m長の柱材、間柱材、集成材用材である。生産目標は年内には6,000㎥/年を実現したい。樹種は杉、檜、カラマツなどで当村では8,000㎥/年くらいが限界である。木材の乾燥は電気を熱源とした除湿型の空気乾燥方式である。森林組合は総勢26人、林業担当は約10人。業者を入れると林業に従事している総勢は50~60人くらいである。
(2)ペレット工場
ペレット工場は幅30m,奥行12m、高さ12m~8m程の片屋根の建物に収納されている。コマツの大型チッパーで原料の木屑を粉砕し、サイロに貯蔵される。
サイロから送られてきたチップは800mmΦ×15mL程のロータリーキルンで水分10%までに乾燥される。出荷先は半分が、きのこセンターの熱電併給所、残りが一般の販売ルートで温水施設や小売に配送される。
ペレットの価格
小売用 :42円/kg
温水施設用 :35円/kg
コジェネ用 :28円/kg でこれでは赤字である。
(3)ガス化熱電併給所
きのこセンターとセットにしてガス化熱電併給所が設置されている。発電出力は180/165kw、熱出力は270kw/260kwでペレット消費量は110kg/hr、全熱効率は75%でガス化・発電ユニット共にドイツ製である。地上と地下の2階建てで、ペレットサイロが1階で2階に投入口がある建物と地上にガス化装置とバグフィルターの入った建物がコンパクトに並んで建っていて、シャッターを閉めると発電所とは思えないほど小さな設備構成になっている。ガス化装置の階下には発電装置がコンクリートの壁に囲まれており、全面が厚いガラスでシールされており騒音が殆ど感じられなかった。ガラス表面は熱かったがずっーと触っていられる程の熱さであった。電気はきのこセンターで消費されている。熱水はナショナルの吸収式冷凍機で冷水を作り出し、きのこセンターの室内温度を年中20度に保つために使われている。寒中は2ヶ月ほどの間止める。
(4)きのこセンター
上野村の基幹産業として「きのこセンター」を建設した。菌床の素材は楢材の細粒、中粒、粗粒のオガ粉をブレンドし、滅菌床で118℃で30分間滅菌したあと、空気呼吸出来るビニール袋に詰めてきのこ菌を植え付け、一ヶ月間熟成培養し、さらに20℃に温度管理された2次培養棟に移して3ヶ月間培養する。きのこが発生し、収穫期になると毎日観察しながら一定の大きさを基準に一本づつ収穫し、出荷する。1年365日休みなく面倒を見なければならない。現在従業員は60名。交代で作業に当たっている。
年間売上 :3億円
就業者数 :70名
きのこセンターの建設費は12億。基本的には国庫補助であり、足りない分を上野村が充当しました。
(5)上野村型バイオマス発電所の優れている点
バイオマス発電所では蒸気による発電が主流であったが発電規模が小さくなるに従って発電効率が低下するのでドイツなどではORCサイクル発電やこのガスエンジン発電が主流になっている。バイオマス発電の場合発電の際発生する熱を如何にうまく使うかがポイントである。家庭用給湯や温水プールなどは時間帯やシーズン、客の大小によってバラツキが生じてしまうがきのこセンターのようにある程度一定量常に利用できたらエネルギー使用効率が高まりこの例では75%までアップすることができた。
地場産業を見つけ出して電熱併給所のようなエネルギー調達方式を地域活性化の支援事業として、政府は支援すべきと思う。