水中対向衝突法により製造されるバイオナノファイバー
― その構造特性と性質 -
2015年1月30日 九大 近藤哲雄教授 ナノテック2015講演会の内容から
ナノセルロースとは・・・・繊維幅100nm以下を定義
繊維の組織は図―2の右上のようになっていて上下面と内部は違う組織である。
内部は図―1のようになっていてOH基でできている。
図-1繊維組織とは水平に伸びるリボン状の組織体で方向性を持っている。
図-2 繊維の組織とナノ加工後の組織図
上下面はC-H結合のため疎水性の性質を示す。横軸方向にはO-H基のため親水性を持つ特殊な構造になっている。
ナノセルロースの研究は1947年カナダの学者が酸処理法で始まった。その後も活発な研究が進められてこの分野はカナダがリードしていて国際規格ISOの「ナノセルロース」編を作ろうとリードしている。
繊維の太さμ(ミクロン)とn(ナノ)の差
総表面積は1000倍になり緻密な構造になる。そのため様々な性質が変わってくる。
・高弾性率を持ち鉄よりも強い強度を示す・・・鉄の1/5の軽さで5倍の強度
・良好な寸法精度と寸法安定性を持つ
・熱伝導率が高い
・透明性 光の吸収や散乱を起こさないので透明度が高い
などなど。
ナノセルロースの作り方
従来の方法は木質バイオマスを化学や物理力でエネルギーをかけて組織を破壊する攻撃的な方法で行ってきた。近藤方式は環境と自然にやさしい砕き方を採用している。
「水中カ対向衝突(ACC)法式」
水中で細胞壁に水鉄砲のように高圧水70~270MPaをぶつける。1回で9割は壊れるが100%処理するには多数回必要になる。 これらの衝撃を与えると弱い水素結合部分の所で切れる。また疎水面にクラックが発生して阻水面が露出する。両方(疎水性と親水性)のナノセルロースが混合してACC型ナノセルロースができあがる。 木と竹で性質が違う。竹は疎水性を特に付与しやすい性質がある。疎水性が高いナノセルロースは樹脂と混じり易くなる。中越パルプ工業のニュースリリーフではポリプロピレンと配合して軽い材料で剛性を高める新素材を開発すると発表した。自動車や電機部品の軽量化を狙ったものである。
参考資料
(1)中越パルプ工業が技術的内容を紹介しているもの
http://www.chuetsu-pulp.co.jp/wordpress/wp-content/uploads/2013/03/20130301CeNF01.pdf
(2)京大矢野浩之教授がナノファイバーの基礎につて解説
http://vm.rish.kyoto-u.ac.jp/W/LABM/cnf