田沢湖畔のロッジ前から、6時11分に秋田駒8合目行きのバスに乗りました。同宿した皆さんと一緒です。お天気は午前中はもつとの予報なのでまずは一安心。田沢湖スキー場の先にある高原温泉からは、一般車両は入れず、バスだけの通行となるので、ここでマイカーからの客が乗り込んで来ます。たしかにここからの道は狭く、バスの幅ぎりぎりで沿道の木々の葉に撫でられながら、どんどん高度を上げてゆきました。周りはブナからタケカンバに変わり、さらにクマザサとナナカマドになると、まもなく8合目終点です。
ここでの見晴らしは素晴らしい。田沢湖から八幡平にかけての雲海を眺めながら、同宿の皆さんとロッジのおにぎりで朝食にしました。あとはお互いに自由行動です。
田沢湖全景 8合目バス停と女目岳
こちらは秋田駒本峰の女目岳1637mの山腹を右から巻いて、火口湖の阿弥陀池一帯の高山植物を巡ることにしました。帰りのバスは11時50分。これを逃がすと新潟まで行けないのです。約4時間しかありませんが、道はよく整備されているので、ゆっくり歩いて充分と見当をつけました。高度差も阿弥陀池までは260mくらいで、ちょうど手頃のトレッキングです。それにルートも、ガイドブックには湯森山を周遊するようになっていますが、ここは安全に同じ道を戻ることにして歩きはじめました。最初から往復すると決めておくことが、高齢者山行の大原則なのです。安心感がまるで違うでしょう。
8合目の雪渓 乳頭山と八幡平(左)
雪渓を三つほど渡ると次第に高山らしくなってきました。途中の片倉展望台からは乳頭山も真近かです。足元にはまずショウジョウバカマ、イワカガミ、タカネスミレ、ツマトリソウなどが現れ、ミネザクラも満開でした。次いでシナノキンバイ、ミヤマキンポウゲの群落が続きます。やがて登りは終わって木道になると、いよいよ阿弥陀池の湿原です。ここにはお目当てのチングルマの大群落が、今を盛りとあたり一面に展開していました。
ミヤマキンポウゲ チングルマ
阿弥陀池の西端には避難小屋とトイレがあります。ここからは北西に展望が開けて、雲海の上にお馴染みの岩手山が聳えていました。しかしその雲海は次第にこちらに迫ってくるようです。お天気はそろそろ危ない感じで、もうあまり長居はできません。
岩手山 男岳(1632m)
池を一周して戻ると男岳1632mがすぐ目の前です。まだ時間はあるので、いくつもあるピークの一つくらいはご挨拶しても良かろうと取り付きました。岩の重なる急登を30分ほどで頂上です。さすがに展望はすばらしい。鳥海山は雲に隠れていましたが、隣の女岳は肩のあたりから黒い溶岩流が流れ出ていました。ネットによると、昨年の9月と今年の3月には噴煙が300mも上がったそうです。山体の温度も上昇しているため、気象庁で警戒中とのこと。秋田駒はやはり現役の火山なのでした。東日本大地震の影響もあるのでしょう。雲行きはいよいよ怪しくなってきました。天国のようなお花畑を後にして、朝来た道をゆっくりと下るうちに、ポツリポツリと雨粒が落ちてきました。下から登ってくる人たちはもうかなり濡れています。しかし雨具を出すまでもなく、8合目のバス停が見えてきました。早めのバスは大正解。花の百名山「秋田駒」を満喫した6月の山旅でした。「了」