千葉県立中央博物館にて標記テーマに企画展があったので見学して情報収集してきました。夏休みで子ども連れの家族で賑わっていました。
どこが違うか
ニホンジカはシカ科の動物、カモシカはシカの名前が付くがウシ科に属してヤギ、ヒツジの仲間です。シカは群れを作って生活しているがカモシカは単独で行動している。シカは北海道(エゾシカ)と西日本に広く分布している。千葉にも古くから生息している。カモシカは日本だけに生息する固有種です。奈良公園のシカは有名ですが鹿島神宮の神が奈良にやって来る時鹿に乗ってやってきたといわれている。
生息数
近年生息区画(5km四方)は増加し1977年~2003年の間にシカ、カモシカ共に1.7倍になっている。カモシカは一時幻の動物といわれる程激減したが増えている。シカは狩猟獣だがカモシカは貴重な動物として天然記念物に指定され捕獲は禁止されている。
体の大きさ
シカはオスがメスの1.5倍ほど大きく各地で大きさが違っている。オスで比較するとエゾシカ130kg、ヤクシカ30,40kg、房総のシカは60kgの平均的な大きさです。カモシカは雌雄の差はほとんど無く35~40kgほど。目の下に分泌腺をもち木の枝や葉の分泌液をこすり付けてコミニュケーションを取っている。
角の形が全く異なる
シカはオスだけが角を持ち枝別れしていて毎年生え変わるのが特徴である。ウシ科の角はシカと違い生え変わりが無い一生ものの角です。雌雄共に持ち英語ではホルン(楽器にある角笛)と呼ぶ独特の形を持っている。木の年輪と同じように年齢を重ねる毎に段差が付いている。シカの角は英語でアントラー(サッカー鹿嶋アントラーズは鹿島神社の神鹿にちなんだ命名)と呼び全く別名になっている。
食べ物
草を食べる。しかし主成分の食物繊維(セルローズ)は自力では分解されない。4つもある大きな胃の中で微生物を繁殖させて反すうしながら微生物に分解してもらっている。反すうは一度食べた物をもう一度消化すること。
シカの社会とカモシカの社会
シカは群れを作って暮らす。一夫多妻、乱婚型で生活場所や食物を占有するなわばりは持たない。条件により定住する場合と季節によって移動する場合がある。
カモシカは群れを作らず単独か母子の2頭づれがほとんどである。オス、メスともに同性に対してなわばりを持っている。一夫一妻型で定住型で同じ雌雄が何年もつがい関係を続けることが多い。子どもは2~4才の時に育った場所を離れる。平均寿命はシカは2~4才、カモシカ6才ほど。
生息環境
シカは開けた草原を好み環境が変わりやすい場所である。高い繁殖率、短命の条件は変化しやすい環境に適合するための方策である。カモシカは深い森林に住み変化の少ない安定した環境である。
カモシカの保護管理
乱獲のため絶滅に瀕したカモシカは1959年の密漁取り締まりから増加に転じた。1970年代には増えすぎて苗木や農作物に被害が発生したため保護地域の設定とそれ以外地域の個体数調整が行われて1000頭程度の捕殺が毎年行われている。
房総のシカ
縄文の遺跡からニホンジカの骨が多数出土している。明治から開発や乱獲で激減して1961年捕獲禁止になった。1980年以降増加傾向に転じて食害被害が発生している。防禦柵の設置と捕獲(2010年度2200頭)で対応しているが耕作地の放棄、シカに寄生するヤマビルとマダニの増加があって大きな問題になっている。資料によると県内の生息数は7,000頭いるのに対して捕獲数も増えつつあるが2,200頭ほどになっている。大多喜町ではシカを1頭ごと買い取って町内の食堂で鹿から揚げ、鹿南蛮(そば、うどん)などのメニューで出している。長野県の「信州遠山」の鹿肉カレーレトルトが博物館のおみやげ品で売られていた。
全国的なシカの食害
1980年代以降野生動物による農作物への被害が増加している。2010年の被害額は200億円弱と推定され、うち半分はシカによるものと見られている。シカ生息数の増加原因は
1)狩猟者の減少
2)農山村の過疎化、耕作放棄地の増加
3)温暖化による冬季死亡率の減少
が主なものである。
また草本、低木が食害を受けて群落構造の崩壊・土壌流失発生など植生破壊が各地で発生して問題になったいる。
シカの食害対策
食害の防止と個体群の安定的な維持の両面から
1)シカがどの位いてその農林業被害と生態系への影響が生じているかの調査
2)その結果を踏まえて自然の保全・管理から捕獲目標を設定し、地域のコンセンサスを形成する
3)捕獲目標を実現するための方策の決定と実行
を具体的に進める必要があろう。